日本のE-MTBビッグ4をE-MTB WORLDで試乗!特徴を徹底解説

2021年11月6日から7日に開催されたE-MTB WORLD 2021。さまざまなE-Bikeブランドが出展していたが、今回は、数あるE-MTBの中でも、これだけは乗っておきたいE-MTB界のビッグ4を紹介する。

今回、E-MTBビッグ4で取り上げるのは、TREK Railシリーズ、Specialized Turbo Levo SL、YAMAHA YPJ-MT Pro、FANTIC XTF1.5シリーズの4台。ここで選択した4台は、モーターの性能や車体性能が高く、E-MTBの中では売れている部類に入る。1台づつ解説しよう。

TREK Railシリーズ

TREKのE-MTBは、トレイルライドからサイクリングまで楽しめるハードテールE-MTBの「PowerFlyシリーズ」、本格的なトレイルライドをメインに作られたフルサスペンションE-MTB「Railシリーズ」の2シリーズを展開している。その中でもRailシリーズは、登場時から様々なメディアで注目されており、すぐに売り切れてしまうフルサスペンションE-MTBとして知られている。

イメージ写真(2020年)

TREK Railは前後29インチホイールと大きい車輪を採用しており、車体重量も23キロと重い。ツーリング系の筆者がトレイルアドベンチャーよこはまのコースを走らせた感覚では、可変アシストを行う「eMTBモード」を上手く使い、フロントホイールはできるだけアウトまで寄せ、立ち上がり重視のライン取りを行うと上手くアシストをかかって面白いように曲がってくれると感じた。下りでのコーナリングは車体が大きく感じる。実際、とあるプロMTBライダーが所有しているRail9.7は、バッテリーを400Wh仕様に変更して、容量を少なくして軽量化を行っているようだ。

モーターは、Bosch Performance Line CXで、定格出力250W、最大出力は推定500Wオーバー(非公式情報で600W近く)、最大トルクは75Nmもしくは85Nm。2021年モデルのRail 5は最大トルク75Nmから85Nmにアップしているが、最大出力に関しては、噂によると最大出力は同じのようだ。Bosch Performance Line CXはパワーの出方が、漕ぎ出しでドカンとパワーとトルクを出す方向にセッティングされており、日本国内向けのE-MTB用モーターでは、同じトルクを採用したE-MTB用ドライブユニットでもパワフルだと感じやすい。

バッテリー容量も625Whと大容量の部類に入り、バッテリーも鍵一本で簡単に着脱可能。また、ディスプレイもカラー液晶画面を採用した多機能ディスプレイ「KIOX」など、オプションが用意されているのも良いだろう。

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Specialized Turbo Levo SLシリーズ

Specialized Turbo Levo SLの特徴は、今回紹介するE-MTBの中でも軽さを重視していること。車体重量は最軽量モデルで17キロ台と、E-MTBの中でも車体重量が軽いため話題になった。トレイルアドベンチャーよこはまのコースを走行した感覚では、下りでのコーナリングは人力マウンテンバイクの感覚に非常に近く、自然な感覚で走ることが可能だ。ホイール径は29インチだが、E-MTBとして見るとホイールの大きさはあまり感じない。

一方で、平地や上りでは、今回紹介するE-MTBの中でも脚力を使う必要がある。Specialized Turbo Levo SLに搭載されているモーターは、Specialized SL1.1で、定格出力240W、最大出力240W、最大トルクは35Nm。一般的なE-MTB用モーターが定格出力250W、最大出力500Wクラス、最大トルク70Nmオーバーなので、Specialized Turbo Levo SLは、一般的なE-MTB用モーターと比較すると、最大出力、最大トルクが半分以下のモーターを搭載しているということになる。実際、平地や上り坂で先行して走行している一般的なE-MTBに追いつこうとしようとすると、頑張って走らないといけない。

バッテリー容量は320Whで着脱不可の完全内臓バッテリーを採用。充電は車体に充電器を差し込む方式を採用している。バッテリー容量はオプションのレンジエクステンダーをあわせても480WhとE-MTBの中では少なく、充電を行う際もバッテリーを外すことができないという問題がある。

Specialized Turbo Levo SLは良くも悪くも人力マウンテンバイクのフィーリングを重視したい人に向いている。E-MTBはモーターのパワーとトルクを活かしたE-MTB流の独特の楽しみ方があるが、Specialized Turbo Levo SLは、E-MTBでも人力MTBの走りを求める人に向いている。これはコーナリングだけでなく、平地や上り坂を走行していても同じだ。価格はアルミフレームのTurbo Levo SL Compが64万9000円。カーボンフレームの場合、Turbo Levo SL Comp Carbonが85万8000円から。

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YAMAHA YPJ-MT Pro

2020年に発表したヤマハ発動機のフルサスE-MTB「YPJ-MT Pro」は、販売台数が1年で200台突破しており、非常に注目されているフルサスペンションE-MTBだ。

YPJ-MT Proの特徴であるDUAL TWINフレームを採用した車体は、重量が24キロと重いのにもかかわらず、軽やかにコーナリングしたり、前輪をクイッと上げることができるのが特徴で、トレイルアドベンチャーよこはまのコースでも車体設計の良さを活かして軽量E-MTBに非常に近いレベルで軽快に曲がることができる。ホイールは前後27.5インチ。

モーターはYAMAHA PW-X2。定格出力240W、最大出力不明(US仕様は500W)、最大トルク不明(US仕様は最大トルクはEXPWモードで80Nm、その他のモードでは70Nm)。レスポンスの良いアシストに、非常に静音性が高いのが特徴だ。

YPJ-MT Proには、可変アシストモード「オートマチックサポートモード」が搭載されているが、この可変アシストは、Bosch Performance Line CXの「eMTBモード」のように、トレイルライドに特化したアシストとは違い、アシストモードをシームレスに変えることで乗りやすくしたアシストとなっている。

欠点は、サイドスタンドの装着ができない、バッテリーは工具を使えば数分で外される、ハンドリングを重視した車体設計でボトルケージ台座が犠牲になっているなど、実用性を犠牲にしているところ。

YPJ-MT Proは、日本国内向けのE-MTBではベンチマークと言えるE-MTBで、一度は試乗しておきたい。価格は66万円。

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FANTIC XTF1.5 CARBON

モータリストが取り扱いを行っているFANTIC E-MTBシリーズは、日本国内での公道走行不可の欧州仕様のみの展開となる。日本国内の公道走行不可ながら、有名MTBショップが取り扱うなど予想以上に売れ、2021年~2022年モデルのFANTIC E-MTBシリーズは欧州仕様フルラインナップに踏み切った。

XTF1.5シリーズには、アルミフレームのXTF1.5とカーボンフレームのXTF1.5 CARBONが日本国内に在庫を持つ国内在庫モデルとして展開。アルミフレームのXTF1.5は630Whバッテリーで、カーボンフレームのXTF1.5 CARBONは720Whバッテリーを搭載している。今回紹介するのはカーボンフレームのXTF1.5 CARBONとなる。

車体性能は720Whの大容量バッテリーを搭載しながら、500Whから625Whクラスの内蔵バッテリーを搭載した一般的なE-MTB(TREK Railシリーズクラス)と同レベルのハンドリングを実現していると感じた。Specialized Turbo Levo SLやYAMAHA YPJ-MT Proには敵わないが、2018年頃に登場した大容量の外付けバッテリー搭載E-MTBとは格の違いを実感させる性能はある。

FANTIC E-MTBシリーズは前後異径ホイールを売りにしているがXTFシリーズは前後29インチホイールを採用している。昔の外付けバッテリータイプのE-MTBのように、車体が起き上がりこぼしのように勝手に起き上がる感覚は無いが、今回紹介したモデルの中ではコーナリングは鷹揚な感覚がある。FANTIC E-MTBでも前輪29インチ、後輪27.5インチの前後異径ホイールを採用したモデルは曲がりやすいため、前後29インチホイールの影響もあるだろう。因みにXTFシリーズは前輪29インチ、後輪27.5インチの前後異径ホイールに対応しているため、XTFシリーズを購入するのなら、前後異径ホイール化を念頭に考えるのをお勧めする。

モーターはBrose Sで定格出力250W、最大出力推定500Wオーバー、最大トルク90Nm。ベルトドライブを採用することで、アシスト時の音が非常に静かなのは良い。アシストは欧州仕様なので減退領域がなく、パワーバンドとトルクバンドが日本仕様よりも非常に太い。元からモーターのパワーとトルクがありパワーバンドとトルクバンドが太いため、急坂でもグイグイと走ることができる。

欠点は、現時点では日本国内での公道走行が不可なこと、Bosch Performance Line CXのような可変アシストモードが当たり前の時代で可変アシストモードが無いのは古いこと、ボトルケージの装着が不可な所。FANTIC E-MTBはパワーをアピールしているのが多いが、バッテリーの全長を切り詰めたり、前後異径ホイール搭載可能にすることで、大容量バッテリーを搭載しながらハンドリングを重視した車体設計なのも注目されている理由だろう。

価格はアルミフレームのFANTIC XTF1.5が56万5000円、FANTIC XTF1.5 CARBONの価格は78万5000円。

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