トレイルからサイクリングまで、フルサスE-MTB「Specialized Turbo Levo SL」で走ってインプレ

日本で展開されているSpecialized製のE-Bikeと言えば、パワーよりも軽さを重視したTurbo SLシリーズだろう。Turbo SLシリーズには、シティタイプのTurbo Como SLや、クロスバイクタイプのTurbo Vado SL、ロードバイクタイプのTurbo Creo SL、エンデューロタイプのE-MTBであるTurbo Kenevo SLなどがあるが、Turbo SLシリーズでも話題になったモデルがトレイルタイプのフルサスE-MTB「Turbo Levo SL」だろう。

Turbo Levo SLシリーズが日本で販売されている他のE-MTBと違うのは、軽量化を追求している事。車体重量はS-Works Levo SLのLargeサイズで17.35kg。CompモデルのLargeサイズは19.4kg。TREKのフルカーボンE-MTB「Rail9.7」が22.7kgなのを考えたら、驚異的な軽さを実現した。

今回、SpecializedがE-MTBの多様性を伝えるために「Turbo Levo SL」で街、MTBコース、ヒルクライムを1日で楽しむメディア向けのサイクリングツアーを開催し、参加することとなった。

筆者は、Specialized Turbo Vado SL 4.0を購入し、それなりに走り込んでいるが、Turbo Levo SLは数あるE-MTBの中でも、舗装路サイクリング性能を無視し、オフロードライドだけに注力したE-Bikeと考えていた。

それは、Turbo Levo SLに搭載されているモーター「Specialized SL 1.1」が関係している。Specialized SL 1.1のスペックは、定格出力240W、最大出力240W、最大トルク35Nm。これは一般的な定格出力250WクラスのE-MTBと比較すると非力な部類に入るためだ。実際、かつてのTurbo Levo SLのインプレ(記事)では、Turbo Levo SLの舗装路性能を紹介していない。

参考で、一般的な定格出力250WクラスのE-MTBを紹介すると、TREK Rail 9.7(2020年モデル)(記事)の場合、車体重量は22.7キロで、搭載されているモーター「Bosch Performance Line CX」は、定格出力250W、最大出力500W以上(非公式情報では600W近く)、最大トルク75Nmを発揮する。Specialized Turbo Levo SLと比較して最大出力が2.5倍出力が高く、最大トルクが2.1倍あり、車体重量は1.2倍重い。

パワー、トルクが少ない代わりに、軽量なフルサスE-MTB「Specialized Turbo Levo SL」が、トレイルライドだけでなくサイクリングでも楽しめるのか、メディアツアーで走りつつ検証する。

Specialized Turbo Levo SLの舗装路性能を試す

今回、乗車したのは、Specialized Turbo Levo SL EXPERT CARBONで価格は99万円(税込、以下同)。Turbo Levo SLシリーズの中でも上級モデルで、これよりも高価なのは169万4000円のS-WORKS LEVO SLのみとなる。

最初に、小田原駅近くにある万葉の湯からスタートし、MTBコースがあるトレイルアドベンチャー小田原に行くことになった。目的地のフォレストバイク小田原は、完全舗装路の公道だ。

Turbo SLシリーズのアシストは、一般的な定格出力250WのE-MTBのように、パワーとトルクに頼って走るのではなく、人力自転車で走行しているときに発生する不快感を切り取った感覚で走ることができる。

Turbo SLシリーズの一番の利点と言えば、アシストが一番弱いモードでも軽快に走れること。一般的な定格出力250WのE-MTBは、パワフルなアシストモードでは、非常に楽で快適に走ることができるが、アシストを抑えて電力消費を抑えたエコモードは、乗り込んでいくうちに多用しなくなることが多い。これは、アシストパワーを落とすと、人力比率が大きくなり、車体重量も重いため、どうしても加速が重ったくなるため。

一方で、Specialized Turbo SLシリーズは、アシストが弱いエコモードを積極的に使うことが多い。これは、単純にパワーやトルクが少ないだけでなく、車体が軽いため、少ないアシストパワーでも加速が良いのと、アシストパワーの出し方が人力自転車のように比較的高回転で漕ぐと、最大出力を出す設計になっているのもあるだろう。

筆者はSpecializedSL 1.1を搭載したクロスバイクタイプのE-Bike「Specialized Turbo Vado SL」を所有しており、平地では一番アシストモードが弱いエコモードを多用して楽しく走行している。Turbo Vado SLよりも重く、抵抗が大きいMTB用タイヤを装着したフルサスE-MTB「Turbo Levo SL」の舗装路性能は期待していなかったが、平地では一番アシストモードが弱いエコモードを多用して楽しく走行することができた。

速度に関しては、筆者の場合は、平地は時速21キロから時速23キロの間で走っていた。アシストが切れる時速24キロを超えて走ることもできるが、タイヤの抵抗が大きいため、Turbo Vado SLと比較してあまり楽しくないため、時速24キロ以下で積極的に走ることになるだろう。

TREK RAILシリーズのような一般的なE-MTBのように、アシストパワーをメインに使い、時速0キロから24キロを2.5秒でグイグイと進む感覚や、Turbo Levo SLと同じドライブユニットを搭載した、ロードバイクタイプのSpecialized Turbo Creo SLや、クロスバイクタイプのSpecialized Turbo Vado SLのように、オンロード向けE-Bikeのような軽快感を求めてはいけないが、モーターアシストのおかげで、人力マウンテンバイクにはないどこまでも走行できる感覚や、MTBの売りである太いタイヤと前後サスペンションのおかげで、乗り心地の良さや安定性の高さは舗装路でも魅力的だろう。


フォレストバイク小田原に行く途中で、「鱗吉」で自然薯棒を頂く。鱗吉は江戸天明元年に創業し、小田原かまぼこの発祥の地で知られている。食べ歩きができる自然薯棒だけでなく、贈答用の詰め合わせや、北海道産の搾りたて牛乳と、オーストラリア産クリームチーズを使った伊達巻など、多種多様な練り物があるようだ。

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Specialized Turbo Levo SLのオフロード性能を試す

フォレストバイク小田原は、家族で楽しめるマウンテンバイクコースを売りにしたMTBコース。子供も楽しめるバンプトラックから、MTBを体験したことが無い人でも、MTBの基本的な乗り方がわかる講習がある。MTBを持っていなくてもレンタル用MTBがあり、Specialized Turbo Levo SLのレンタルも行っている。

他にも、スネークトレイルや忍者トレイルなど、MTBに慣れた人でも走りごたえがあるコースがあり、初心者から上級者でも楽しめるコースとなっている。

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今回は、主に浦島トレイルや忍者トレイルを中心に走行した。Specialized Turbo Levo SLに関しては、フォレストバイクだけでなく、様々な場所で乗車したことがあるため、その体験も交えて紹介しよう。

平地や上り坂に関しては、人力MTBと比較するとラクラクと走ることができる。フォレストバイクのMTBコースは上り坂もあるため、体力の消耗が少ないため、何度もコースを楽しむことが可能だ。

E-Bikeとして見ると、Turbo Levo SLに搭載されているSpecialized SL1.1最大出力240W、最大トルク35Nmと、一般的なE-MTBと比較するとパワフルではない。コーナーを曲がる場合は、車体が軽くバランスが良いため、人力MTBのように自然に曲がることが可能だ。

ちなみに、一般的なフルサスE-MTBは平地や上りは、力強いパワーとトルクで速く走れるが、コーナーリングは車種によって異なる。例えば、RAIL 9.7の場合、タイトコーナーを普通に曲がると車体が重く感じるが、敢えてアウト側にフロントタイヤを寄せて、クリッピングポイントをコーナー奥に置き、コーナー後半の走りやすさを重視するような走りかたをすると、面白いようにカーブを曲がることができる。これは、ハイパワー・ハイトルクのドライブユニットで「eMTBモード」のような可変アシストを頼って踏んで走れるため。

因みに、このような走り方は、どんなE-MTBでもできるわけではなく、可変アシストが無いE-MTBや、ヤマハ・YPJ-MT Proの可変アシスト機構「オートマチックサポートモード」では、全く違う走り方となる。

一般的なE-MTBは、車種によってスポーティに走らせる方法は異なるが、Turbo Levo SLの場合は、人力MTBの感覚でスポーティに走ることができる。E-Bikeの世界でしか体験できないパワー重視か、Turbo Levo SLのように、人力MTBのようなハンドリングを求めるのかは人によって異なる。

下りのトレイルに関しては、Turbo Levo SLが非常に有利だ。車体重量が軽く、車体バランスも良いため、人力MTBに非常に近い感覚で、自然にコーナーを曲がることができる。Turbo Levo SLの場合、意識せずブレーキングポイントを考えたり、コーナーを曲がることが多い。一方で、一般的なE-MTBの場合、カーブを曲がる際は意識的にブレーキングポイントを考えるようになる。また、Turbo Levo SLは、車体が軽いので、下りのトレイルを走行しているとき、アシストが邪魔だと感じたら切って走ることも可能だ。

下りのトレイルを走ることに関しては、Turbo Levo SLは初心者から上級者までオススメの1台だろう。自然にコーナーを曲がることができるというのは、初心者でも乗りやすいため、安心して走ることができる。

Turbo Levo SLのヒルクライム性能を試す

フォレストバイク小田原でトレイルライドを楽しんだあとは、小田原駅周辺に戻り、昼食休憩。そのあとは、一夜城ヨロイヅカファームまで行くヒルクライムコースを走ることに。

一夜城ヨロイヅカファームに行くには、途中から登場するヒルクライムを上ることとなった。普通の人力MTBなら、MTBコースを何回も走り、昼食休憩を行った後にヒルクライムは行いたくないのが実情だが、Turbo Levo SLのような軽量E-MTBなら、アシストパワーのおかげで精神的に不安が無いので、特に問題を感じないで上っていくことが可能だ。TREK RAIL 9.7のようなパワフルなE-MTBと比較すると、パワーやトルクに頼って走るのは難しいが、人力MTBの不快感を削いでくれるアシストは、ヒルクライムでも効果がある。

頻繁にE-Bikeに乗り、今ではメインの自転車がE-Bikeになると、このようなヒルクライムは、もはや当たり前で、いかに電池消耗を抑えて走るのか、いかに楽に走るのかを考えて走ることが普通になってしまうが、オフロードコースを一通り走り、昼食休憩を行った後でも、気後れすることなく、みんなで一緒に走れるのを平気で行えるのは、E-Bikeの大きな利点だろう。


そして、一夜城ヨロイヅカファームに到着しコーヒーブレイク。一夜城ヨロイヅカファームは、豊臣秀吉が一夜のうちに築城したかのように見せたという伝承で知られている「石垣山一夜城歴史公園」のすぐ近くにあり、レストラン、パティスリー、ブーランジェリー、直売所を併設している農園。小田原の街並みを見て、ケーキやパン、コーヒーを楽しんだり、近くにある農園を巡るのも良いだろう。

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一夜城ヨロイヅカファームからは、小田原に帰ることになる。ヒルクライムから一転して、下り坂がメインとなるが、このような場所は、実はTurbo Levo SLのようなフルサスE-MTBは乗りやすい。それは、前後サスペンションのおかげで振動を吸収し、太いタイヤで安定性が高く、サドル高をハンドルに装着されているスイッチ1つで可変するドロッパーポストを装備しているので、下り坂ではサドル高を低くして安全に下ることができる。

Specialized Turbo Levo SLの総評

ゴールの小田原お堀端 万葉の湯で露天風呂に浸りつつ、Specialized Turbo Levo SLのサイクリングツアーで乗っていて考えた事をまとめてみた。

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小田原お堀端 万葉の湯 https://www.manyo.co.jp/odawara/

レンジエクステンダーは必要か?

Specialized Turbo Levo SLを購入するとき、気になるオプションパーツの1つといえば補助バッテリーの「SL RANGE EXTENDER BATTERY FOR SL SYSTEM」だ。バッテリー容量は160Whで、充電時間は2時間35分。内蔵バッテリーと組み合わせると、バッテリー容量は480Whとなる。

公式では、内蔵バッテリーのみでECOモードで乗った場合、おおよそ3.5時間のライドが可能で、レンジエクステンダーのバッテリーを使用すると、最大で1.5時間のライドを延長することができる。

なぜ、Turbo Levo SLの航続距離が明確に出していないのかと言うと、MTBが走行するトレイルは、公道よりも路面抵抗が大きく、アップダウンが多いため、具体的な航続距離を出すのが難しいため。これはSpecializedだけでなく他社でも同じ傾向にある。

因みに、今回のメディア向けサイクリングツアーの場合、バッテリーの総消費量は236Wh。Specialized Turbo Levo SLの内蔵バッテリー容量が320Whなので、半分以下消費しているが、電池切れにはならなかった。

Turbo Levo SLでサイクリングを行うのなら、レンジエクステンダーは欲しい。Specialized Turbo SLシリーズの内蔵バッテリー容量は320Whと、一般的なE-Bikeと比較してやや少ない。ただ、世界的に軽量E-Bikeに搭載されているバッテリーの容量は200Whクラスなので、軽量E-Bikeのバッテリー容量としては多い種類に入る。

バッテリー容量は多ければ多いほど、航続距離が増え、パワフルなアシストモードを多用できる時間が長くなる。例えば、今回のツアーの場合、レンジエクステンダーを使えば、午前中はアシストを抑えめに走行し、午後は疲れたのでパワフルなアシストを多用することができる。

因みに、2021年11月1日から12月31日までSpecialized Turbo Levo SLカーボンモデルを購入すると、先着30名に5万6980円分のレンジエクステンダーと専用ケーブルをプレゼントするキャンペーンを行っている。

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Specialized Turbo Levo SLは、サイクリングからトレイルライドまで多様な遊びを行うことできるか

Specialized Turbo Levo SLは、E-Bikeとしては軽量な車体に、パワーとトルクが少ない軽量モーターを搭載していること。E-Bikeの醍醐味と言えば、モーターの力を使ったパワフルな走りだが、パワーとトルクが少ないSpecialized Turbo Levo SLは、サイクリングからトレイルライドまで多様な遊びを行うのは難しいのではないかと最初は思った。

今回のガイドツアーで実際にTurbo Levo SLに乗って一通り走行したが、パワーとトルクが少ない軽量モーターでもE-Bikeなので楽しく走ることができた。もし、これが人力MTBならトレイルライドだけで終わるだろう。

E-MTBの大きな利点は、体力を気にせず、散策からトレイルライド、ヒルクライムを沢山行うことができ、充実した日々を楽しむことができるところだ。E-Bikeなら、坂道があっても何も考えず走るため、パワードスーツを着てサイクリングを楽しむ世界を体験できる。

SpecializedはTurbo Levo SLの試乗レンタルを1日から3日まで有料で行うことができるサービスを実施している。Turbo Levo SLに興味があるのなら、一度体験してみるのも良いだろう。

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Specialized Turbo Levo SL EXPERT CARBONのスペック

 

  • フレーム:FACT 11m full carbon, 29 Trail Geometry, Integrated down tube battery, enclosed internal cable, dropper post routing, 148mm spacing, fully sealed cartridge bearings, 150mm of travel
  • リアショック:Fox Float DPX2 Performance Elite, 3- position adjustment, 52.5x210mm, Rx Trail Tune
  • フロントフォーク:Fox Float 36, Performance Elite, Grip2 damper, 150mm, 51mm rake, HSC, LSC, HSR, LSR, Kabolt axle
  • 重量:-
  • ブレーキ: SRAM Code RS, 4-piston caliper, hydraulic disc, 200mm
  • ギア(前):Praxis+SRAM X-SYNC Eagle 30T
  • ギア(後):Sram XG-1275, 12-speed, 10-52t
  • フロントホイール:Roval, sealed cartridge bearings, 15x110mm spacing, 28h+Roval Traverse 29 Alloy, 30mm inner width, hand-built, 2Bliss Ready
  • リアホイール:Roval DT Swiss 360, 3-pawl design, SRAM XD driver body, 12mm thru-axle, 148mm spacing, 28h +Roval Traverse 29 Alloy, 30mm inner width, hand-built, 2Bliss Ready
  • タイヤ:Butcher, GRID TRAIL casing, GRIPTON® compound, 29×2.3″/Eliminator, GRID TRAIL casing, GRIPTON® compound, 2Bliss Ready, 29×2.3″
  • ドライブユニット:Specialized SL1.1(最大出力240W、最大トルク35Nm)
  • アシスト方式:ミッドドライブ
  • バッテリー:内蔵式 320Wh
  • 充電時間:約2.5時間
  • アシストモード:3段階※Mission Controlアプリでアシスト力を変更可能
  • 航続距離:-

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