通勤から旅まで対応するドロップハンドルE-Bike「ヤマハYPJ-ER」をインプレ

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世界初の量産電動アシスト自転車を製造したことで有名なヤマハ発動機。ヤマハ発動機は、街乗りなどの電動アシスト自転車のPASに加え、電動アシストスポーツ自転車のYPJシリーズも展開している。

今回紹介するYPJーERは、大容量バッテリーとディスクブレーキを採用したドロップハンドルタイプのEーBike。2018年3月に登場し、現在でも大きな変更もなく販売されている。価格は33万円(税抜)。今回は、YPJーERのインプレをお届けしよう。

筆者はMiyata ROADREX 6180(記事)、Specialized Turbo Levo SL(記事)、Corratec E-POWER SHAPE PT500(記事)、欧州仕様のフルサスペンションE-MTB「FANTIC XF1INTEGRA」、執筆時点では発売されておらずプロトタイプの「STROKE Cargo Trike T4」(記事)など、様々なE-Bikeを試乗したことがある。また、E-Bikeの所有に関しては、Specialized Turbo VADO SL 4.0(記事)を所有している。

ヤマハYPJーERの車体をチェック

最初にYPJ-ERの車体をチェックしよう。現代のEーBikeを見慣れていると、YPJ-ERのデザインは古典的だと言わざるを得ない。これは、バッテリーを車体に外付けしているのもある。2021年現在、多くのEーBikeでは、内臓式バッテリー(インチューブバッテリー)が使われているが、YPJ-ERは外付け式バッテリーを採用している。2018年当時、日本市場ではまだ内臓式バッテリーを採用したE-Bikeは登場していなかったため、仕方ないと言えるだろう。

“都市部通勤から自転車旅まで対応するクロスオーバー・ロードバイク“をコンセプトにした、YPJ-ERはロードバイクというよりは、ツーリング向けのドロップハンドル車という考えが合っている。タイヤは700×35cと太く、車体は泥除けが装着できる隙間がある。そのためロードバイクのようなクイックなハンドリングは無いが、スポーツ自転車初心者でも段差の通過が安心して行え、直進安定性が高くて安心して走ることができる。

車体デザインは、フラットバーモデルのYPJ-ECに似ている。但し、YPJ-ERはドロップハンドルに適した車体設計となっているため、YPJ-ECを購入して、そのままドロップハンドルを装着してもYPJ-ERになるわけでは無いため注意しよう。ギアに関しては、YPJ-ERはE-Bikeでは珍しくフロントクランクにダブルギアを採用している。

パワフルで静かなドライブユニットは、現代の目で見ても優秀

今回、ヤマハYPJ-ERとミヤタROADREX 6180、Specialized  Turbo VadoSL4.0の3台のE-Bikeで、八丈島を走る事を行なった。八丈島に関しては後々紹介するが、まずはYPJ-ERのインプレを紹介しよう。

今回、YPJ-ERに乗車した中で利点と言えるのが、ドライブユニットの性能。YPJ-ERに搭載されているドライブユニットはヤマハPW-SEと呼ばれるユニットで、フラットバータイプのYPJ-EC、泥除けやキャリア、フロントサスペンションを搭載したトレッキングタイプのYPJ-TCなどに搭載されている。定格出力は240Wで、最大出力、最大トルクは不明。YAMAHA MOTOR USAではYPJ-ERに似た「URBAN RUSH」が用意されているがこちらのスペックは、定格出力250W、最大出力500W、最大トルク70Nmとのこと。

筆者は最大トルク35Nm(Specialized SL1.1 ”最大出力”240W)から、最大トルク95Nm(日本未発売48V電圧日本仕様E-Bike用ユニット)まで乗ったことがあり、発進時の感覚でおおよそのトルクがわかるが、恐らくトルクに関しては70Nmは出ていると思われる。

高性能なドライブユニットの特徴を簡単に表すと、高出力、高トルク、法規まで速度を追い込んでいる、静音製だろう。PW-SEは、出力とトルクが30万円台前半のE-Bikeでは強く、時速24キロまできっちりとアシストを行い、日本のアシスト比を限界まで追い込んでいる。静音性に関しては、筆者がかつて2年前に乗ったYPJ-TCがヒューン系の高音だったのが、今回試乗したYPJ-ERはPW-Xの低音系のギアの音で静かになっていた。

YPJ-ERは2018年に登場したE-Bikeだが、2021年現在の目で見ても、20万円台から30万円台前半のE-Bikeに搭載されているドライブユニットだけを見ると、パワー、トルク、静音性能が非常に優秀だ。

今では古いと言わざるを得ないパッケージング

ドライブユニットは、現代の目で見てもこの価格帯では非常に優秀なYPJ-ER。しかし、車体設計などのパッケージングを見ると、古いと言わざるを得ない。

一番わかりやすいのが前輪の荷重。YPJ-ERに関しては、一般的な人力自転車と比較すると、やや過大気味と言える。これは、バッテリーをダウンチューブ上に装着したのと、オンロード向けE-Bikeのためフロントセンターが短くて、荷重がかかりやすくなるというのもある。

車体前方に重さを感じる理由は、ダウンチューブ上にバッテリーを搭載し重心位置が微妙に変化したのもあるだろう。2018年に登場したE-Bikeの殆どはバッテリー外付けで、YPJ-ERのように車体前方に重さを感じ、重心が高く感じるのが殆どだった。バッテリー外付けで前輪荷重過大を克服したのはNESTO X-VALLEY E6180(記事)ぐらいだ。

また、前輪荷重過大の一番の問題は、柔らかいタイヤを装着するとタイヤが潰れすぎて頼りなくなり、操縦安定性が劣化する問題がある。荷重過大の問題を解決するためか、YPJ-ERはCST製のE-Bike用タイヤを装着している。このE-Bike用タイヤは、重いE-Bikeにも対応するためにタイヤが非常に頑丈だ。

YPJ-ERのハンドリングはE-Bike用タイヤに頼っているというイメージだ。2021年現在の目で見るとSpecialized Turbo Vado SLやMiyata Roadrex 6180と比較して車体バランスは良くないが、硬いE-Bike用タイヤで前輪荷重過大を抑え、操縦安定性能を上げている。そのため、非E-Bike用タイヤや細いタイヤを装着すると、前輪荷重過大で操縦安定性が劣悪になり可能性がある。

因みに、今回のインプレでは、二人の非E-BikeユーザーにもYPJ-ERに乗ってもらったが、このような感想はあまり無かった。これは筆者が様々なE-Bikeに試乗して知識を得ているのもある。

標準装備されているタイヤは700×35cで、グラベルロードのようにもっと太いタイヤを入れることができないのも気になる。スピードが出ない人力自転車なら700×35cというママチャリとほぼ同じ太さのタイヤでグラベルを走ることはできるが、E-Bikeの場合はモーターアシストでスピードが出る。そのため700×35C程度のタイヤは細いため、楽しく走るのは難しい。グラベルを走るのなら、最低でも700×42c、できれば650×47Bが欲しいところ。

ギアもフロント50/34Tという、人力自転車のようなダブルギアは、今の時代では古い考えだと思うのが筆者の見解だ。一番軽い34Tを使うと、脚を軽快に回してパワーを上げて走れるが、舗装路ではすぐに頭打ちになってしまう。一番重い50Tは、アシストが切れる時速24キロ以上にすぐに達してしまい、坂道に入るとギアが重いため失速気味になり、一番軽い34Tに入れる必要があるため扱いにくいと感じた。特に日本仕様のE-Bikeは、高速域になるとアシストパワーが少なくなるため、脚を高回転で回して人力パワーを出してアシストパワーを出す必要があるため、重いギア比は実際には使わない無駄なギアになることが多い。

人力自転車の場合、人間の脚力だけで走り、軽い車体で一気に時速35キロ以上出すこともあるため、ツーリングではフロントギア2枚以上は欲しい。しかし、E-Bikeの場合は車体が重いため時速30キロ以上のスピードを出す機会がほとんど無い一方、時速30キロ以下の領域で継ぎ目がなく変速できた方が扱いやすいため、YPJ-ERのギアはどっちもつかずだ。筆者ならYPJ-TCに搭載されている46/34Tにして、ローギアード化を行うだろう。

因みに2018年当時のレベルで評論した場合「悪くは無く、おすすめの一台」という評価だろう。これは、YPJ-ER登場時、他社から類似モデルが殆どなく、内蔵バッテリー搭載E-Bikeが殆ど無かったためだ。

YPJ-ERはどんな人におすすめか

ドライブユニットは今でもこの価格帯では一流で、ブレーキもシマノ Tiagra油圧ディスクブレーキに、バッテリー容量は478Whと、400Wh後半でバッテリー容量も大きいため、ロングライドや長い上り坂でも電池切れになりにくいため、ツーリング用E-Bikeとしての基本用件は備えている。

これだけ評価は厳しいのは、筆者がTREK Rail9.7やYAMAHA  YPJ-MT ProなどのフルサスペンションEーMTBや、Specialized Turbo Creo SLなどのE-ロードバイクなど最新のEーBikeに試乗し、自身もSpecialized Turbo Vado SLに乗り、街乗りからサイクリング、ロングツーリングなど行う内に、E-Bikeには何が重要なのか考えるようになるにつれて、要求するレベルが高くなったのもあるだろう。

2021年6月現在、YPJ-ERのライバルは、Miyata Roadrex i 6180、BESV JG1などのグラベルロードタイプ、フラットハンドルで良いのなら軽量クロスバイクタイプのE-Bikeで有名なSpecialized Turbo Vado SL4.0がある。これらのE-Bikeは内蔵式バッテリーを採用しているため、重心が下がりハンドリング性能が上がっている。このようなE-Bikeと比較するとYPJ-ERは、細かいところまで煮詰めているが、フルモデルチェンジを行う必要があると言わざるを得ない。ただ、バッテリー容量に関してはこれら同ジャンル、同価格帯のE-Bikeと比較して容量が大きく、この部分は今でも強みとなるだろう。

YPJ-ERが合っている人は、E-Bikeでもフロントダブルギアに拘りたい人、舗装路重視のツーリング用E-Bikeが欲しい人、パワフルなヤマハのドライブユニットに拘っている、大容量バッテリー搭載のE-Bikeに乗りたい人向けだろう。

ヤマハYPJ-ERのスペック

  • フレーム:アルミフレーム
  • フロントフォーク:アルミ
  • 重量:19.6kg(Mサイズ)
  • ブレーキ:SHIMANO Tiagra 油圧式ディスクブレーキ
  • ギア(前):50/34T
  • ギア(後):11-32T 10段変速
  • フロントホイール:700C スルーアクスル
  • リアホイール:700C スルーアクスル
  • タイヤ:700×35c
  • ドライブユニット:ヤマハ PW-SE(定格出力240W、最大トルク-Nm【海外ページでは70Nm】)
  • アシスト方式:ミッドドライブ
  • バッテリー:36V 13.3Ah 478Wh
  • 充電時間:約3.5時間
  • アシストモード:4段階(プラスエコモード/エコモード/スタンダードモード/ハイモード)
  • 航続距離:(242km/152km/111km/93km)

文:松本健多朗

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