デイリーアーカイブ Nov 8, 2025

パナソニック、”ママチャリ”の知見で新市場へ 免許不要の特定小型「MU」で電動モビリティに安心と安定を

自転車国内最大手のパナソニック サイクルテックが、新たな電動マイクロモビリティ市場に本格参入する。2025年9月25日、同社初となる特定小型原動機付自転車(以下、特定小型原付)「MU(エムユー)」を、本年12月上旬から発売すると発表した。価格は234,000円(税込)。電動アシスト自転車で長年培った技術と信頼を背景に、近年急速に市場が拡大する一方、安全性への懸念も指摘される特定小型原付の分野に、「安心・安全」という新たな基準を打ち立てる構えだ。 「MU」の最大の特徴は、多くの人が乗り慣れた”ママチャリ”を彷彿とさせる、またぎやすいU字型フレームと着座式のデザインだ。2023年7月の道路交通法改正以降、16歳以上であれば免許不要で運転できる手軽さから、電動キックボードを中心に特定小型原付の利用者は急増した。しかし、立ったまま乗る不安定さや小さな車輪が段差でふらつくといった点に不安を感じる声も少なくなかった。 パナソニックはこの点に着目。あえて自転車と同じ20インチのタイヤを採用し、路面の凹凸や段差に対する走行安定性を格段に向上させた。サドルの高さも調整可能で、乗車適応身長は141cm以上と小柄な人でも安心して乗れる設計となっている。これは、「くらし起点での製品設計」を掲げ、電動アシスト自転車市場で19年連続国内シェア首位を維持してきた同社ならではのアプローチだ。都市の短距離移動という新たなニーズに応えつつ、最も重視したのは利用者の安全だった。 「MU」はスロットル操作のみで走行し、ペダルを漕ぐ必要はない。最高速度20km/hの「車道モード」に加え、最高速度を6km/hに制限し、車体前後の最高速度表示灯が緑色に点滅する「歩道モード」を搭載。これにより、走行が許可されている歩道での通行も可能となり、利用シーンを大きく広げた。 心臓部であるモーターは定格出力250W。12度の坂道も登坂可能な力強さを持ちながら、加速度センサーが緻密に出力を制御することで、急発進を防ぎスムーズな走り出しを実現する。バッテリーは、同社の電動アシスト自転車で実績のある大容量の16.0Ahリチウムイオンバッテリーを採用。約5時間の充電で、最長約40kmの航続距離を誇る。バッテリーは取り外して室内で充電できるため、集合住宅などでも利便性が高い。 特定小型原付市場は、これまで新興のスタートアップ企業が牽引してきた側面が強い。その一方で、ユーザーからは「どこで修理すればいいのか」「アフターサービスは大丈夫か」といった購入後のサポート体制への不安の声が上がっていた。 パナソニックはこの課題に対し、既存の全国の自転車販売店ネットワークを最大限に活用することで応える。多くの部品を電動アシスト自転車と共通化し、扱いやすい設計にすることで、街の自転車店での修理やメンテナンスを可能にした。これはユーザーにとって絶大な安心感につながるだけでなく、販売店にとっても新たな商機となる。まさに、大手メーカーならではの強みを活かした戦略と言えるだろう。 一般社団法人日本電動モビリティ推進協会(JEMPA)によれば、2024年の加盟社による特定小型原付の販売台数は1万台を超え、市場は着実に成長している。しかし、その手軽さゆえの交通ルールの認知不足やマナーの問題も浮き彫りになっており、社会的な受容性をいかに高めていくかが業界全体の課題となっている。 パナソニックが自社の調査で、電動マイクロモビリティの利用に際し「交通ルールの明瞭化」や「法制度の整備」を求める声が多いことを把握している点も、今回の製品開発に影響を与えたことは想像に難くない。同社は販売時における交通ルールの周知徹底にも力を入れる方針だ。 電動キックボードとは一線を画す安定性と、全国規模での手厚いサポート体制を両立した「MU」の登場は、市場に「安全性」と「信頼性」という新たな競争軸をもたらす可能性が高い。これまで購入をためらっていた女性や高齢者層など、新たなユーザー層の掘り起こしも期待される。 MU(エムユー)|特定小型原動機付自転車|Panasonic

ホンダ ジャパンモビリティショー2025でホンダ製E-MTBの市販予定車を発表

ホンダは、2025年10月に開催される「ジャパンモビリティショー2025」において、新型の電動アシストマウンテンバイク(E-MTB)の市販予定車を世界で初めて公開すると発表した。2023年に同ショーで発表され、大きな注目を集めたコンセプトモデルをベースにしているとのことだ。 今回発表されるE-MTBは、2023年に公開されたコンセプトモデルをベースに、「Ride Natural・Reach New Peaks」というコンセプトのもとで開発が進められてきたモデル。ホンダが長年培ってきたモーターサイクル技術を応用し、自然の中を誰もが自由に駆け巡ることができる、新たなモビリティの楽しみ方を提案する。 ジャパンモビリティショー2025のホンダブースでは、このE-MTB市販予定車のほかにも、新型EVシリーズ「Honda 0(ゼロ)シリーズ」のプロトタイプなど、多数の新型モビリティが展示される予定だ。 2023年のジャパンモビリティショーで初公開された「Honda e-MTB Concept」は、ホンダが本格的にE-MTB市場へ参入することを示唆するモデルとして、大きな話題を呼んた。 このコンセプトモデルの最大の特徴は、ホンダの高性能モーターサイクルにも用いられる薄肉アルミキャスト技術を転用した、オリジナルのフレームとスイングアームが特徴だった。これにより、従来のE-MTBで使われている熱処理が必要な鍛造アルミフレームよりも環境負荷が低い。 2023モデルでは、アシストユニットにブローゼ製36Vモーターを製品を搭載していた。また、外出先での充電を可能にするポータブルバッテリーチャージャーのイメージモデルも同時に公開され、E-MTBの楽しみ方をさらに広げる提案がなされていた。 ジャパンモビリティショー2025で発表されるのは欧州市販予定モデルとのことだ。 「Japan Mobility Show 2025」Hondaブース出展概要について | Honda 企業情報サイト

マイアミ沖・キー・ビスケーン、電動アシスト自転車を「島内全面禁止」に

フロリダ州マイアミの沖合に位置するバリアアイランド、キー・ビスケーン(Village of Key Biscayne)が、島内の電動アシスト自転車(eバイク)および電動キックボードの全面禁止を継続する方針を決めた。WLRN パブリック ラジオ アンド テレビジョンによると、8月20日の村議会(評議会)では、成人の限定解禁を含む見直し案が僅差で否決され、2024年から続く「島内全域での電動マイクロモビリティ走行禁止」が維持された。可決は4対3。これにより、クラス1(ペダルアシスト)の低速型も含め、島内の公道でのeバイクは一律に違法となる。 同島では2024年2月、住民で教育者のメーガン・アンドリューズ氏(66)が、電動自転車に乗った12歳の少年と衝突して死亡する事故が発生。これを受け、村は2日後に緊急の全禁止措置を導入し、その後も段階的に延長・恒久化してきた経緯がある。2024年5月には2025年8月までの延長を視野に入れた条例が第1読会を通過、違反時の罰金(初回250ドル、再犯500ドル)と車両の一時押収などの執行手続きも整備された。 今回の採決では、成人に限ってクラス1のみを認める穏健案も議論されたが、評議会は最終的に現行の全面禁止を選んだ。米テック系媒体の報道によれば、警察当局は「成人の限定解禁」を提案していたものの、評議会は安全性を最優先に全面禁止を据え置いたという。いずれにせよ、決定により「島内のどこでもeバイクは不可」という、全米でも例の少ない厳格な体制が当面続く。 法制度面でも動きがあった。フロリダ州では従来、eバイクは通常の自転車と同様に扱われるのが原則だったが、2025年7月1日に発効した州法改正で、地方政府が年齢制限などのきめ細かな規制を設けられるようになった。キー・ビスケーンはこの権限拡大を受けてもなお、年齢緩和ではなく「全面禁止の継続」を選択した形だ。 地理的な特殊事情も判断に影響している。島内の大動脈であるクランドン・ブールバードは郡道のため、かつては自転車レーンの通行が合法と整理されていたが、2024年秋、マイアミ・デイド郡と村の間で「2年間の実験的協定」が成立。村が当該区間の運用ルールを独自に設計できる余地が広がり、島内の規制を事実上、一本化しやすくなった。こうした権限の明確化は、島全体での厳格な運用を後押ししている。 一方で、地域社会の意見は割れている。島内の自転車販売業者や一部の住民からは、「ヘルメット義務化や年齢制限など、段階的な規制で安全を確保すべきだ」との声が根強い。市民の移動手段としての有用性や渋滞緩和効果を評価し、「全面禁止は過剰」とする見解も少なくない。2024年の時点から、将来的な規制緩和に含みを持たせるべきだという論点は繰り返し提起されてきた。 今回の採決前後、南フロリダ広域ではeバイクや類似電動車両が絡む重大事故が相次ぎ、議論の緊張感は高まっていた。NBC Miamiによれば、マイアミ圏の幹線橋ではeバイクと自動車の衝突や、未成年が運転する電動ATVによる死亡事故が報じられたばかりで、世論の安全志向が改めて強まった格好だ。 国・州の大局では、eバイクは温室効果ガス削減や高齢者・子どもの移動支援などで期待が大きく、全米の多くの自治体は「利用促進」を軸に安全対策(速度抑制、歩道走行禁止、ヘルメット義務化、教育・取締り強化)を重ねる。だが、歩行者と車両が密に交錯する小規模コミュニティでは、実効的な取り締まり体制の構築が難しい現実もある。キー・ビスケーンは「迅速な安全確保」を優先し、全面禁止という“強い薬”を選び続けている。 観光・滞在者への影響も無視できない。島はリゾートや州立公園を擁し、マイアミ本土からリッケンバッカー・コーズウェイで結ばれる人気の行楽地だ。今後も島内では電動アシスト車の持ち込み・利用で取り締まりや罰金の対象になり得るため、訪問者は「ペダルのみの自転車」や徒歩、公共交通・タクシーなど代替手段の検討が必要となる。見直しの機運がないわけではないが、現状では「eバイクは使えない島」という現実を前提に計画を立てるのが賢明だ。 キー・ビスケーンの決定は、マイクロモビリティと安全・秩序の折り合いをめぐる全米の縮図でもある。交通弱者・低炭素移動の推進という大義と、狭い生活道路・観光客混在エリアのリスク管理。その板挟みのなか、同島は「ゼロトレランス」で臨む。今後、教育・取締り・インフラ整備を組み合わせた“中庸解”が再浮上する可能性もあるが、足元では厳格運用が続く公算が大きい。