クラウドファンディングの電動アシスト自転車やE-Bikeが嫌われている理由とは?

多くの自転車店が嫌っている物の1つが、クラウドファンディングの電動アシスト自転車やE-Bikeだろう。

クラウドファンディングは、プロジェクトを立ち上げた人や法人に対し、不特定多数の人が、購入・寄付・金融といった形態で資金を供与する仕組み。有名なのが2016年11月に公開された片渕須直監督のアニメーション映画「この世界の片隅に」や、奈良県にある世界遺産「法隆寺」の維持管理費用などでクラウドファンディングが使われたことで知られている。

自転車の車体や自転車用品でもクラウドファンディングは実施されており、特に電動アシスト自転車やE-Bikeのクラウドファンディングが多い。

そんなクラウドファンディングの電動アシスト自転車やE-Bikeは、自転車店は嫌うことが多い。その理由は胡散臭い宣伝、アフターサポートの不安など、様々な問題があるためだ。

出典:「MATE X」今話題の高性能な上、お買い得な折りたたみ電動自転車を日本で公開! – CAMPFIRE (キャンプファイヤー) (camp-fire.jp)

例えば、世界的なクラウドファンディングで成功を収めたと謳っているMATE Xは、耳あたりが良い言葉が書いてあるが、プロの目からすれば、無駄に太いタイヤを装着して、雪道では埋まるほど車体重量が異様に重く、強度が落ちて折りたたむ意味が無い車体や、スタイリッシュを謳っているが中国の卸売サイトで見るような車体、荷重バランスが悪くてモーターのサイズを大きくして高出力が出しにくく、後輪へのアシストは適正なギヤ比で行うのが難しく、E-MTBでは採用されていないリアインホイールモーターを搭載する、廉価な機械式ディスクブレーキをプロ仕様と言うなど、業界関係者にとっては誇大広告に感じるだろう。

ちなみに、MATE BIKEはクラウドファンディングで成功した一方で、海外クラウドファンディングサイト「Indiegogo」コメント欄などでは品質の悪さが問題になっており、自転車ビジネスメディア「Bicycle Retailer」はメリーランド州でフロントサスペンションの破損による事故で訴えられていると報じた。また、自転車ビジネスメディア「Cycling Inderstory」は、イギリスの運転者・車両基準庁(DVSA)が、MATE BIKEがE-Bikeの条件の1つである定格出力250Wのモーターを搭載しておらず、定格出力750Wモーターを搭載していたため違法車両として起訴されていると報じている。

自転車店によっては、クラウドファンディングのE-Bikeを品質や部品供給、アフターケアに関して不安が多いため修理を拒否する所もあるが、既にクラウドファンディングのE-Bikeによる、品質や部品供給、アフターケア問題は発生している。例えば、2019年にクラウドファンディングを開始した折りたたみ自転車タイプのE-BikeであるUnited Concepts AGのTHE ONEは、オリジナルデザインを謳っていたが、中国のJaunty Bikesと同一品があるため問題になった。その後、2021年03月に会社の精算し、実質的に売り逃げを行った。

 

様々な意味で有名なHonbikeは、劣悪な性能だけでなく品質面の悪さがSNS上で見られており、この件に関しては、インターネット上だけでなく業界関係者による別ルートでも情報を確認している。また、海外で発売されたモデル(日本仕様とはシートポストが長いなど若干異なる)は、Indiegogoのコメント欄でシートポストの破損を訴える内容もある。一部では輸入元が大規模な仮想通貨投資事件の疑いがあると見られており、経済メディア「NetIB-News」が報じている

クラウドファンディングビジネスは売り逃げを行いやすい構造となっている

クラウドファンディングの電動アシスト自転車やE-Bikeの多くが、専門家や業界関係者にとっては誇大広告に感じるほどの表現を採用しているのは、手っ取り早く売るのに都合がいいためだと思われる。小売店を通して販売する場合、販売店がサポートを行う必要がある。そのため、壊れやすい粗悪品や違法車両を販売した場合、販売店も被害を受けるため、自転車専門店などの真っ当な小売店だと、怪しい電動アシスト自転車やE-Bikeは仕入れない傾向にある。

一方でクラウドファンディングの場合、販売店と契約せず直接簡単に販売することができる。しかし、壊れた場合のサポートに関しては、販売店が無いため直接販売したメーカーが行う必要がある。電動アシスト自転車・E-Bikeは、基本的に取扱店でないと故障を直すのが難しく、このようなクラウドファンディングで購入したE-Bikeが壊れた場合、一般的な自転車店で直すのは難しい。

クラウドファンディングは資金力が足りない中小、零細ブランドが実施することが多いため、故障対応時のサポートに不安がある。実際、先程紹介したようにクラウドファンディングを実施した会社が、直ぐに撤退して売り逃げを行った事例があるため、クラウドファンディングタイプの電動アシスト自転車やE-Bikeのサポートは期待できない。

中国転売系電動アシスト自転車やE-Bikeの問題は?

出典:https://7gotech.en.alibaba.com/productlist.html?spm=a2700.shop_index.88.7.54fbb195AclRjK

ここ最近、クラウドファンディングで問題になっているのが、中国の卸売サイトから仕入れて販売する中国転売向けの商品だろう。このタイプの商品は価格の割に性能が低いため各所で問題となっている。電動アシスト自転車やE-Bikeに関しても、クラウドファンディングで見るモデルの多くはこのタイプの疑いがある。

日本国内で販売するには、日本国内法に準拠したアシスト比率にする、PSEマークを表示して検査結果を保管する、型式認定を取得するなどの確認や対応を行う必要があるため、単純にそのまま転売を行うだけでは難しい世界となっている。

きちんとした自転車販売店なら取り扱いを行う前に、その部分を確認して販売するのが一般的だが、クラウドファンディングや直販の場合はそのような部分が曖昧となっている。実際、クラウドファンディングや無名ブランドの電動アシスト自転車やE-Bikeは、法律に準拠した電動アシスト自転車・E-Bikeなのか確認できないため防犯登録を断る事例がある。

電動アシスト自転車やE-Bike業界は”金とコネクションの殴り合い”と理解すべし

クラウドファンディングでよく見る中国の卸売サイトで公開されている電動アシスト自転車やE-Bikeは、高性能な大手ブランドの電動アシスト自転車やE-Bikeと比較して性能面で期待できないだろう。

まず、高性能な大手ブランドの電動アシスト自転車やE-Bikeが製造できる工場は、欧州市場を中心としたE-Bikeブームで余裕が無いほど製造を行っており、中国の卸売サイトで公開する意味がない。とある大手自転車会社に所属している人によると、仮に卸売サイトに公開している会社でも、Web上では紹介しない一部企業向けの裏メニューとなっていると語っている人もいた。

電動アシスト自転車やE-Bike業界は、自動車やオートバイと同じく”金とコネクションの殴り合い”の世界となっている。欧州市場では125CCオートバイよりも高額なE-Bikeが沢山売れ、マイクロモビリティの中でもブランドイメージが崩壊しないため、ドイツの高級車メーカーのポルシェや世界有数のモーター企業である日本電産、戦車や兵器などで有名なラインメタルなど一流企業が参入している。

日本電産製モーターを搭載したSTREEK ACTIVE CARGO TRIKE(出典:STREEK and Eurobike 2022 | STREEK CargoTrike (stroke-design.com)

大手企業クラスの高性能な電動アシスト自転車やE-Bikeが、クラウドファンディングで登場するのは期待できない。高性能な電動アシスト自転車やE-Bikeが製造できるのなら、クラウドファンディングを実施しなくても、投資ファンドから資金調達を行うことができ、商品自体の質が高ければ、プロの目から見ても安心できるため、自転車専門店が取り扱ってくれるはずだ。

また、E-Bikeに搭載されているドライブユニット(モーターやバッテリー、ディスプレイ等)は、著名な大手ブランドになると、零細企業など、どんな会社でも取り扱いができるわけでは無いようだ。実際、今までの実績がある企業に優先的に供給を行う話を聞くことはある。

クラウドファンディングでは、自転車だけでなく様々なガジェットで中国からそのまま転売を行ったビジネスが横行しており、大手メディアで取り上げられている。このような転売ビジネスによりクラウドファンディングの不信感を感じる人は少なくない。

金とコネクションの殴り合いの世界である電動アシスト自転車・E-Bike業界に、クラウドファンディングの電動アシスト自転車・E-Bikeに期待するのは無謀だろう。

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