【E-Bike生活】フルサスE-MTBの街乗りを検証! BESV TRS2 AM生活 Vol.4

モーターアシストがあるE-MTBは、従来の人力マウンテンバイクではしんどい、楽しくない事が楽しくできるようになった。一番分かりやすいのが街乗りだろう。かつては、フルサスペンションのマウンテンバイクで街乗りを楽しむブームがあった。ホイチョイ・プロダクションズ原作の自転車映画「メッセンジャー」では、スリックタイヤを装着したフルサスMTBで街中を疾走し、一部の自転車ブランドでは街乗り用フルサスMTBも売られていた。

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しかし、サスペンションロスが大きいためスピードが出ない、マウンテンバイクなので車体が重い等の問題があり、軽量で軽い力でスピードが出るクロスバイクやロードバイクがブームになり、街乗りマウンテンバイクは衰退した。

しかしモーターとバッテリーの力が加わったフルサスE-MTBは、人力フルサスMTBの欠点だった部分を解消した。今回は、新車価格44万5,000円(税抜)のフルサスE-MTB「BESV TRS2 AM」の街乗り性能を検証する。

街乗りフルサスE-MTBの利点(BESV TRS AM編)

モーターアシストで発進や上り坂が楽

E-Bikeの大きな特徴がモーターアシストで発進や上り坂が楽な事。BESV TRS2 AMに搭載されているドライブユニット「Shimano STEPS E8080」は、最大トルク70Nmとオフロード走行に耐えうる高トルクでアシストする。力強いアシストは街乗りでも効果的で、MAXXISのダウンヒル用MTBタイヤ(27.5×2.6)を装着しても、ロードバイクよりも軽々と発進し、上り坂も楽に走ってくれる。絶対的なスピードはロードバイクと比較すると遅いが、街乗りではスピードよりも発進や上り坂が楽なのが重要なため、ロードバイクよりもE-MTBのほうが街乗りは楽しいだろう。

大容量バッテリーで長距離走行も可能

BESV TRS2 AMはBESVオリジナルの36V 14Ah(504Wh) バッテリーを装備している。最大航続距離は一番パワフルなHIGHモードでも公称90キロのアシスト走行が可能だ。この最大航続距離は、走る場所によって異なり、ひっくり返りそうな急坂やスタックしそうな泥道等がある道を走る場合、力強いアシストが必要なため、電池の消費が大きくなり、公称値よりも航続距離が短い場合が多い。

しかし、舗装路の街乗りでは、ひっくり返りそうな急坂やスタックしそうな泥道は無いため、公称値と同等か、もしくはそれ以上の航続距離を出すことが可能だ。一般的なE-MTBはオフロード走行に耐えうる大容量バッテリーを装備しているため、街乗り程度なら安心して走ることができるだろう。

太いタイヤの安心感

フルサスE-MTBに装着されている太いタイヤや前後サスペンションは、オフロード走行のために装着されているが、歩道の段差でもパンクしにくく安心感が高い。E-MTBの場合、モーターアシストにより抵抗が大きいブロックタイヤでも楽に進むため、細いスリックタイヤに交換しなくても良い。そのため、河川敷や見知らぬちょっと荒れた道に気軽に入ることも可能だ。

街乗りフルサスE-MTBの欠点(BESV TRS AM編)

ハンドル幅が広いため歩道走行不可

日本では、歩道の通行が可能な「普通自転車」の規則の1つに、ハンドル幅が600ミリ以下でないといけない規則がある。マウンテンバイクのハンドル幅は、オフロード走行でも安定性を重視するため600ミリを超える物が多い。BESV TRS2 AMの場合は700ミリを超えるため法律上は歩道走行は不可だ。歩道走行を可能にするためには、ハンドルバーカットや他のハンドルを装着する必要がある。

タイヤ幅が太いため有料駐輪場のラックが使用できない可能性がある

駅前やスーパー等で見かける一部の有料駐輪場では、前輪をラックに差し込むタイプが使われている。このような有料駐輪場は、太いタイヤがラックに入らず駐輪できない事があるため注意が必要だ。

荷台の装着は想定されていない

ヨーロッパでは、フルサスE-MTBに泥除けや荷台を装着したサイクリング車が売られている。日本では、フルサスE-MTBでそのような使い方をするユーザーが少ないため、執筆時時点ではそのようなツーリング用フルサスE-MTBは販売されていない。

BESV TRS2 AMは本格的なオフロードライドを楽しむオールマウンテンタイプのE-MTBのため、荷台の装着は想定されていない。日本では、TOPEAK テトララックM1やM2等、フルサスMTB用の社外品キャリアが売られているが、メーカーの使用方法から反した使い方のため自己責任で装着しよう。

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スタンドの装着不可

今まで紹介した欠点の中で一番の問題がサイドスタンドが装着できない事。BESV TRS2 AMはサイドスタンドが装着できないため、ちょっとした買い物を行う場合でも駐輪場所に難儀する。これは街乗り以外のサイクリングやトレイルライドでも問題だ。また、バッテリー着脱を行う場合、車体を直立した状態で行うのを想定しているため、バッテリーの脱着時が面倒な事もある。

TREK Rail9.7

このサイドスタンド問題に関しては、TREK Rail9.7等、一部のフルサスE-MTBではサイドスタンドが装着できるモデルも登場している。車体重量が重いフルサスE-MTBは、サイドスタンドが装着可能が一般的になるだろう。

フルサスE-MTBは街乗りからサイクリング、ロングライド、トレイルが楽しめる万能自転車に

人力フルサスMTBと言えば、トレイルやオフロードしか走らないマニアックな自転車というイメージがあった。しかし、モーターアシストの力を得たフルサスE-MTBは、街乗りからサイクリング、ロングライド、トレイルが楽しめる万能自転車へと大きくに進化した。

その一方で、フルサスE-MTBはトレイルやオフロードコースだけを走るための自転車という設計やマーケティングを行っている所が多い。しかし、クルマやオートバイの世界を見ればわかるが、限界まで走行性能を突き詰めた競技専用車両はニッチで、メインは走行性能と快適性能を両立した車種が殆どだ。モーターアシストの力により走行性能と快適性能を両立し、街乗りも面白くなったフルサスE-MTBは、せめて、サイドスタンドは装着できるように設計して、多くの人に購入してもらうのも1つだろう。

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文:松本健多朗

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