マンスリーアーカイブ 4月, 2019

自転車盗難防止システム「AlterLock」をインプレッション

自転車生活を送るうえで大きな問題なのが盗難だ。高性能なスポーツ自転車や電動アシスト自転車は快適に長距離走行できるが、高価で盗まれやすいため、気軽にサイクリングを楽しめない。盗難防止を行う場合、最初に思い浮かべるのが頑丈な鍵を装着する方法だろう。頑丈で破壊しにくい鍵を装着するのは、盗難防止を行う上で基本でもある。しかし、このような鍵は重くて、持ち運びにくい欠点がある。 そこで近年は、IoT技術を活用し、鍵と併用することで盗難防止効果を狙った物が登場している。その中でも、注目されているのがAlterlockだ。Alterlockは振動検知アラーム+GPS+通信機能を搭載したスポーツ自転車向けの盗難防止サービス。Alterlockで振動を検知して、アラーム音を鳴らし、GPSで取得した位置情報を「Sigfox通信」でスマートフォンに送信する自転車盗難抑止システムだ。 現在、Alterlock以外に、盗難防止用ブザーやBluetoothトラッカーがあるが、Alterlockの一番の特徴は、自転車に特化した所だろう。 例えば、デバイスの装着は多くのスポーツ自転車に採用されているボトルケージ台座を使用する。工具を使わないと簡単に取り外せないため防犯性は高い。また、AlterLock取扱店では盗難防止用の特殊ボルトによる取付け・取外しサービスも行っている。デバイスは厚さ8mmと非常に薄く設計されているため、ボトルケージをそのまま使うことが可能。デバイスの装着が想定されている場所はシートチューブだが、ダウンチューブの装着でも使用可能とのことだ。 因みに、グラベルロードバイク等一部のスポーツ自転車には、フロントフォークやダウンチューブ下側にもボトルケージ台座が装備されている車体もある。しかし、フロントフォークの場合は、転倒などで本体に接触し破損する危険がある。また、ダウンチューブ下の場合は大きな段差や岩での接触による破損の危険性があるため、筆者はオススメしない。 車両協力:サイクルハーバー青梅 デバイスのデザインは、ドライブサイドから見たときに目立たない形状になっている。デバイス重量は60gと小型で、空気抵抗を考慮した形状でレース志向のユーザーにも使える形状を採用したとのこと。また、ズボンのすそもひっかからない形状で、気軽にサイクリングを楽しむ一般ユーザーにも向いている。これだけ小さいながら、1回の充電でおよそ1カ月間使用可能だ。 AlterLockを使うには、専用アプリ(Android/iOS対応)を入れ、サービスの申し込みを行う。サービス利用料は月額390円、もしくは年額3,900円の2つから選ぶことが可能だ。サービス料金が低価格なのは、Sigfox通信という規格を採用したのもあるようだ。 サービス登録時の特徴としては、Alterlockを装着している自転車データ(写真、メーカー、名前、車体番号、防犯登録等)の情報を登録する必要がある。これにより、万が一盗難された場合、自転車の情報をすぐに思い出すことが可能だ。 Alterlockに使われている通信規格 AlterlockにはBluetooth、Sigfox、GPSの3つの通信規格を使用している。今回は、その3つの規格について紹介する。 Bluetooth接続 デジタル機器用の近距離無線通信規格の1つで多くのガジェットで使われている。スマートフォンとAlterlockの接続や設定を行う時に使われており、Bluetoothの接続範囲内でAlterlockの接続を行う必要がある。オートモードの場合、Bluetooth接続が切れると 自動的にガードモードに入る。 Sigfox通信 フランスSigfoxが開発した通信規格。日本では 京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)が、インフラ構築およびネットワークサービスの提供を行っている。非常に低価格かつ、低消費電力、長距離通信を特徴とした規格で、Alterlockだけでなく、ガスや水道のスマートメーターや設備管理、農業、児童や高齢者の見守りなど、多くのIoT製品に使われている注目の規格だ。日本のSigfox通信人口カバー率は既に94%以上(2019年2月時点)となっており、自転車盗難の多い主要都市は既に大部分がサービス提供エリアに含まれている。(2020年3月全国カバー予定)世界的に幅広く使われている規格なので、広い範囲で普及するだろう。 GPS 今では殆どの人が知っている現在位置を伝える衛星測位システム。AlterlockにもGPSは使われているが、GPSロガーとは違う。GPSロガーは常にトラッキングを行うため電力消費が大きい欠点がある。一方、AlterLockは盗難防止に特化しているため、盗難を検知してから位置情報の取得を行う。また、盗難を検知して以降も数分のインターバルを挟んで振動を検知する度に再度位置情報の取得を行う。GPSロガーのように常時トラッキングは行っていないため、電池消費が少なく、長い間充電しなくても動かすことが可能となった。位置情報の誤差については、建物に囲まれているような環境だと大きくなることを確認した。 Alterlockの設定 Alterlockはスマートフォン上で設定を行うことができる。汎用的なBluetoothトラッカーでは行えない細かい設定が可能だ。ここではAlterlockの設定を解説する。 オートガード:オン/オフ オートガードはAlterlockと接続したスマートフォンが離れると、自動でガード状態になる仕組み。オートガードをオフにすると手動でガードモードの動作や解除が行える。 振動検知感度:低/中/高 Alterlockに振動が加わった場合、スマートフォンに通知するようになっている。この時の振動検知の感度を変更することができる。 「高」は風やちょっとした振動でも反応するほど、小さな振動で作動する。「中」は、自転車を少し持ち上げて地面に降ろす程度の振動で検知する。「低」はバイクラックから自然に降ろすような衝撃で検知する。バイクラックで軽くぶつかって揺れる程度では検知しないとのこと。 アラーム:オン/オフ ガード状態で振動検知した場合に鳴るアラーム音の設定を行う。オンにすると、振動を検知した時に約80dBのアラームが鳴る。オフにするとアラームが鳴らず、ステルスで盗難探知が可能だ。 アラームの長さ:5~120秒 アラーム音が鳴る時間の長さを設定する。最短では5秒で、最長では120秒のアラーム音を鳴らすことができる。5秒毎で調整が可能。 電波強度:5段階 Bluetoothの電波強度を5段階で設定できる。1が一番弱く、5が一番強い。強ければ長い距離、弱ければ短い距離でスマートフォンと通信できる。 システム音:オン/オフ オンにした場合、オートガードのオン/オフ時に音がなる。 シクロライダー流Alterlock設定方法を紹介 Alterlockは、アラームのON/OFFやオートガード等を細かく設定できるため、一般的な盗難防止ブザーやBluetoothトラッカーとは違い、場面に合わせた使い方が可能だ。今回、1ヶ月以上Alterlockを使い、街乗りから長距離サイクリングに輪行まで、様々な場面で使った中で筆者なりの設定方法を紹介する。 街乗り/サイクリング時 オートガード:オン 振動検知感度:中、もしくは高 アラーム:オン アラームの長さ:60~120秒(長めの方向) 電波強度:1~3の中で、その時の状況に応じて弱めに設定 システム音:オン 街乗りやサイクリングでコンビニや飲食店に立ち寄る場合、いちいちスマートフォンで設定せず使えるようにオートガードは稼働状態とする。そして、振動検知感度は「中」もしくは「高」と高めにし、長めのアラーム音を出すことにより、盗難抑止効果を高めておく。コンビニや飲食店に入る場合、Alterlockとスマートフォンとの距離が離れていない場合がある。この時は、電波強度は弱めで設定すると、短い距離でオートガードが作動する。 鉄道輪行の場合 オートガード:オン 振動検知感度:中 アラーム:基本はオフ(構内移動時は場合によってはオンを使用) アラームの長さ:5秒など短時間 電波強度:3~5と強めに設定 システム音,:オン 鉄道輪行を行う時もAlterlockは役に立つ。特急/新幹線輪行では、車両端部やデッキに自転車を置いて目を離す場合がある。置き引き等の不安があるこのようなシチュエーションでも、Alterlockは役に立つ。振動検知に関しては、乗り心地が粗い車両だと感度を「高」にした場合、反応する場合があるため、最初は中に設定したほうがいいだろう。駅ナカで買い物などを行う時は、置き引き防止も兼ねてアラーム音を鳴らすのも一つだ。 飛行機/フェリー/高速バス輪行時 オートガード:オフ(ライドモード) 輪行状態の自転車を、そのまま荷物室に入れる飛行機輪行や高速バス輪行などでは、盗まれる心配が殆ど無いので、オートガードをオフにし、ライドモード(解除)にするのがお薦めだ。 Alterlockの設定に関しては、あくまでも参考として考えて、好みの使い方を試してほしい。 万が一盗難された場合は? Alterlockを装着した自転車が盗難された場合、スマートフォンに盗難検知の情報が出る。振動検知アラームの感度が高いなど、誤検知だった場合は左の「誤検知です」のボタンを押せばいい。 しかし、本当に盗難された場合は「位置情報を確認」ボタンを押すと、盗難された自転車の位置情報を見ることが可能だ。それだけでなく、SNS投稿を行うための例文や、最新の位置情報をSNSで公開することができるURLが表示できるため、万が一の盗難にも頼れる盗難防止サービスだ。 Alterlockを1ヶ月ほど使用した感想は、自転車での外出時の安心感が高くなった事だ。コンビニや飲食店、観光スポット等に入る時、自転車から離れないといけないため、どうしても不安になるが、Alterlockを装着すると自分の自転車を見張る事に近い安心感があった。物理的な鍵と併用することで、サイクリングの安心感が高まるだろう。   View this post on Instagram   三色団子ちゃん ロードの盗難対策 #コミック #コミックエッセイ #コミック #コミックエッセイ #illustrations #roadbike #cyclocross #cycling #イラスト #イラスト #自転車 #自転車女子 #自転車漫画 #自転車 #自転車 #自転車女子 #自転車置き場 #自転車🚲 #自転車生活 #ロードバイク #ロードバイク女子 #ロードバイク漫画 #ロードバイク乗り #ロードバイク #ロードバイク女子 #ロードバイク乗り #ロード#漫画 #漫画...

気軽に楽しく乗れる「アップライト・スポーツバイク」とはどういう自転車?

スポーツ自転車の世界では、前傾姿勢で乗るようなタイプが殆どとなっている。これは多くのクロスバイクも比較的前傾姿勢で乗るようなスタイルを採用している。このようなスポーツ自転車をシティサイクルみたいなアップライトなポジションで乗ろうとすると、後輪に荷重がかかりすぎて後ろ車輪やタイヤに極端にかかってしまう問題がある。 前傾姿勢になれない人にとっては、アップライトに乗ることができるスポーツ自転車は欲しいと思うし、個人的には一番注目しているジャンルだったりする。一部ではアップライトに乗れるスポーツ自転車の提案を行っている所がある。 サイクルモード2015で日東ブースに展示してあったRivendell  Cheviotは、サイクルモードの中でも3本の指に入るぐらい注目した自転車だ。 フレーム形状はミキストフレームとなっているが、SOMA Buenavistaなど、多くのミキストフレームを採用したスポーツ自転車とは違うのが、ホイールベースが長く非常にゆったりとしたスタイリングとなっていること。恐らくアップライトに乗車しても後輪に極端な荷重がかからず、人間を中心に乗れるようにするのと、ハンドルが手前に来るアップハンドルを採用してもOKになるように、ハンドル~サドル間を長くとっているためだと思う。SOMA Buena vistaはドロップハンドルやアップハンドルもできるように、前傾姿勢とアップライトの中間を取ったようなスタイルなのに対して、Rivendell Chevotはアップライトで乗るのを割り切ったようなスタイルとなっている。 ジオメトリ表でもSoma Buena vistaとRivendell Cheviotは大きく違い、似たサイズを比べてみるとBuena Vista(サイズ54)はトップチューブ長555mm、チェーンステイ長450mmなのに対し、Cheviotはトップチューブ長595mm、チェーンステイ長500mmと、従来のスポーツ自転車として見てはいけないのが分かると思う。 紙上で見たレベルのスペックでは、シマノ・Clarisを採用していて普通のマニアは目をむけないが、その辺ではあまり見ない前ギアが非常に小さい2枚のギアに、金属製のチェーンガードやBrooksの幅が広いバネ付サドルなど見るところはたくさんある。 アップライトでも楽に走行できる理由とは   View this post on Instagram   One of my favorite things to do, is ride my bike through the Yosemite Valley floor. Yosemite is great because you can see so much just in one spot. #yosemite #yosemitenationalpark #yosemitefalls #nationalpark #bennobikes #cruiserbike #valleyfloor...

なぜ、マウンテンバイクルック車は選んではいけないのか解説する

スポーツ自転車の世界では「ルック車」と呼ばれる物がある。これは見た目は高価なスポーツ自転車に見えるが、値段が安く、実際に走らせると走りが重く機能がない自転車の事を指している。2019年現在、ロードバイクやクロスバイクもルック車があるが、ロードバイクブーム前は、ルック車と言えばマウンテンバイクルック車の事を指すのが一般的だった。 ルック車に関しては、日本国外のほうが多種多様な物がある。例えば、アメリカのウォルマートでは、399ドルでカーボンフレームのマウンテンバイクルック車が買えるようだ。高価なレース用自転車に使われているカーボンフレームを採用しているが、部品の形状が安っぽく、剛性が必要なフロントフォークブレースが溶接なのを見れば、ルック車だとわかるだろう。 https://www.youtube.com/watch?v=m5KX8EVuYs8 そんなマウンテンバイクルック車だが、どのくらいの性能があるか気になる人もいるだろう。殆どのマウンテンバイクルック車はオフロード走行はできないと書いてあるが、本当にオフロード走行できないのだろうか。 海外では、マウンテンバイクルック車でトレイルを走ってみた動画をあげる人がいる。 https://www.youtube.com/watch?v=5S78kVm7RtY https://www.youtube.com/watch?v=1A6bKUCcDW0 マウンテンバイクルック車でトレイルを走行した動画を見ると、無事に走行できたルック車は少なく、以下のトラブルをよく見る。 衝撃に耐えられずハンドルステムがずれて曲がる。 ブレーキをかけた状態で、ハンドルを左右に振るとフロントフォークが捻れる。 ブレーキが効かない。 フロントサスペンションが壊れる。 どれも、有名ブランドのエントリーマウンテンバイクどころか、グラベルロードでも発生しないだろう。 マウンテンバイクルック車は買わないほうが良い理由 オフロード走行できないマウンテンバイクルック車は、ホームセンター等を中心に売られているが買わないほうが無難だ。例えば、マウンテンバイクルック車は改造しようと考えても、時代に取り残された部品規格を使っているので、改造できない。写真のブリヂストン・Ordina M3(現クロスファイアー)みたいなのは例外で、改造するのは大変だ。 仮に無理やり改造しても割に合わない。オフロード走行の衝撃に耐えられずハンドルステムがずれて曲がったり、ブレーキをかけた状態で、ハンドルを左右に振るとフロントフォークが捻れる等、一般的な公道走行すら対応していないような作りだけでなく、見てくれだけを重視した物が多い。 (参考サイト) 2年間乗ったFINISS MTBをいじってみた:https://mystaranbike.hatenablog.jp/entries/2016/12/03 FINISS/SHINEWOOD MTB修理完了:https://mystaranbike.hatenablog.jp/entry/20161225/p1 オフロード走行ができないマウンテンバイクルック車を購入するのなら、クロスバイクルック車を買ったほうが良い。同じルック車でもクロスバイクルック車のほうが車体が軽く、細いタイヤが装備されているので軽快に走行できる。または、もう少しお金を出して本物のマウンテンバイクやクロスバイクを買うべきだろう。