自治体・被災地支援の新たな“くるまシェルター”──軽バンをベースに畳空間やトイレ機能を搭載した多機能車両『MARU MOBI Lite』が誕生

7月1日、岐阜県可児市とキャンピングカー製造のトップ企業であるトイファクトリー(本社・可児市)は、軽自動車をベースに被災地支援に特化した多機能車両『MARU MOBI Lite(マルモビライト)』を共同開発し、発表会を同市内で開催した。従来はトヨタ・ハイエースをベースに展開してきた同社の“マルモビ”シリーズに、新たに軽バンを採用した新タイプが加わる。

プロジェクトの起点は、可児市職員や保健師らが能登半島地震の被災地支援に従事した際の“生の声”にあった。支援現場では、乳幼児を抱えた被災世帯が夜泣きなどで周囲に気遣いを強いられる、集団生活ではプライバシー確保や休憩場所が不足する、簡易トイレが追いつかず衛生環境が悪化するといった課題が浮き彫りになった。中でも「もっと小回りが利き、女性職員でも運転しやすい車両が欲しい」との要望が強く寄せられたことから、一般の自治体公用車として普及している軽バンへの展開が検討された。

記者発表会には可児市の冨田市長とトイファクトリーの藤井社長が登壇。藤井社長は「“備えない防災”を旗印に、平時から有事まで多目的に活用できるモビリティの必要性は、昨今ますます高まっています。ハイエースベースのマルモビが大変好評をいただく中で、より幅広い自治体様のニーズに応えるべく、軽バンベースの性能・機動力を取り入れました」と開発意図を説明した。

『MARU MOBI Lite』は、主にスズキ/エブリイ(軽バン)をベースに、平時の公用車としては最大4人乗車が可能な通常仕様を維持しつつ、有事の際には車内をフルフラットの畳空間に転換できる。具体的には、セカンドシートを格納した上に専用の床板を設置し、L1,750×W1,200mm(約1.35畳)のくつろぎスペースを構築。芯材に撥水・防汚加工を施した和紙製畳マット(特殊ウレタン剤入り)を4枚敷くことで、断熱性・クッション性に優れ、夏はさらさら、冬は冷えを抑える快適空間を実現した。

これら床板や畳マットは、すべて車内上部に収納可能な構造とし、通常走行時にも積載の邪魔にならない設計。女性や子どもでも容易に設置・収納できる軽量性も特徴で、職員の休憩・車中泊はもちろん、被災者用のプライベートシェルターとして活用できる。畳マットの上にシュラフを敷けば寝具として使用でき、車内カーテンやマルチシェードでプライバシーを保護する。

また、キャンピングカーで定評のある装備も多数搭載した。強力な冷暖房性能を発揮するポータブルエアコン(冷房-8℃、暖房+9℃の能力)をはじめ、リアに展開できるカーテン&タープキット、女性でも簡単に操作できるサイドオーニングテント、太陽光発電を担うシャープ製ソーラーパネルシステムなどを装備。併せて、レール脱着式のサイドテーブルやカウンターテーブル、ドリンクホルダー付き座椅子などの車内家具も“浮かせた”構造で設置し、平時のデスクワークや休憩用途に最適化した。

被災地で深刻化するトイレ不足への対応としては、ポータブルトイレの設置が可能。車内空間をカーテンで仕切れば、即席のトイレカーとしても運用でき、支援職員や住民の衛生面をサポートする。

車体への後付け加工は、既存のネジ穴を利用する方式を採用し、ボディに新たな穴を開ける必要がない。これにより、自治体保有の軽バン車両持ち込みによる後架装が短時間で完了し、緊急需要にも迅速に対応できる点を強調している。今後はスズキ/エブリイ以外の車種展開も視野に入れ、各地での導入を促進する計画だという。

トイファクトリーはこれまでに、ハイエースベースのマルモビを今年だけで全国30以上の自治体に納入。可児市でも実際に能登地震発災直後の支援に投入され、支援物資運搬や給水ポンプの補助などで大きな成果を上げた。冨田市長は「被災地では長期的なシェルター機能とトイレ機能が必須ですが、大型車両だけでは対応しきれない場面が多々あります。軽バンベースのマルモビライトは、機動性と多機能性を兼ね備え、特に山間部や狭隘地での活躍が期待できます」と評価した。

「災害支援」「地方創生」をキーワードに掲げるトイファクトリーは、『MARU MOBI Lite』を通じて、平時の地域サービスから有事の備えまで、自治体・団体の多様な課題解決を一台で実現する新しいモビリティを提案。被災地で本当に必要とされる機能をギュッと詰め込んだ“くるまシェルター”は、今後の防災・減災の現場で、重要な役割を果たすことになりそうだ。

平時活用、有事機能発揮を形にしたマルチパーパスモビリティ「MARU MOBI(マルモビ)」|キャンピングカー専門店のトイファクトリー

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