土曜日, 9月 19, 2020
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Eバイクは自転車のカタチをしたパワードスーツだ【E-Bikeコラム】

ヨーロッパを中心に流行している「E-Bike」。日本でも、様々な大企業が参入しており、レンタサイクルで活躍したり実際に購入して楽しむ人が増えている。自転車界の流れを大きく変える力があるE-Bikeは、従来のペダルバイク(人力自転車)や、オートバイと比較される傾向にある。様々なE-Bikeを見たり乗ったりしていくうちに、ペダルバイク(人力自転車)とも、オートバイとも違う「自転車のカタチをしたパワードスーツ」だと感じた。

E-Bikeが「自転車のカタチをしたパワードスーツ」という持論は、Bosch Performance Line CX搭載車やShimano STEPS E8080搭載車など様々なE-Bikeに乗り、パワードスーツ「マッスルスーツEvery」を試着する等をしていくうちに、確信に変わっていった。今回は「自転車のカタチをしたパワードスーツ」という持論に至った理由について解説する。

E-Bikeが「自転車型パワードスーツ」だと考えた理由

E-Bikeが他の乗り物と違うのは、乗りにくい演出や個性を求めていない事だろう。例えば自動車やオートバイでは荒削りな演出がある車種が好かれる事がある。ピーキーな挙動や甲高いエンジン音を出すスポーツカーや、車体が重く重低音を出すアメリカンバイク等、演出や個性があることで支持される乗り物が存在する。

一例を上げるとすると、「カワサキ・650W1シリーズ(W1/W1S/W1S-A/650RS”W3″)」。1966年に発売され、70年代中盤まで販売されたWシリーズは、第1次バイクブームでも根強い人気だった。70年代初期の人気オートバイと言えば、モーターのように回り静かなエンジン音を出す4気筒エンジン搭載した大型オートバイ(ホンダ・ドリームCB750/550/500FOUR、カワサキ・750RS/Z750FOUR)が主流だったが、650W1シリーズはメグロ譲りの振動と住宅地では容易にエンジンをかけることができない豪快なエンジン音に根強い人気があった。

カワサキ・650W1シリーズ(W1/W1S/W1S-A/650RS”W3″)は、メグロの末裔で売れたと言っても良く、日本で初めて”ブランド”で売れたオートバイだろう。1970年代前半に、高校生でRX350→W1S-A→CB500FOURと乗り継いだ某氏の話を聞く等様々な情報を精査した限りでは、プロダクトとしては既に時代遅れだった、メグロ譲りの振動と豪快なエンジン音が、4気筒エンジン搭載した大型オートバイにはない個性があるからこそ一定の人気を得たのだろう。

(参考)M-BASE | カワサキWの誕生から終焉まで – 三樹書房

一方、E-Bikeに関しては乗りにくい演出や個性を求める世界ではない。E-Bikeに求める条件は、いかに人間の思うがままにアシストしてくれるか、いかに音を出さず静かにアシストしてくれるか、いかにコーナーをペダルバイク(人力自転車)のように人間の思うがままに曲がってくれるか、いかにトレイルを人間の思うがままに走破してくれるか、いかに人間の思うがままに遠くまで連れて行ってくれるかが重要視される。つまり、機械でありながら人間の感覚の延長線のプロダクトが求められている。

実際、E-Bikeの世界では、人間の感覚に沿って、アシストが評価されるのに対し、人間の意思に反して力強く発進したり、タイムラグがあるアシストや、アシスト時にモーター音が大きいドライブユニットの評価は低い。E-Bikeがドコドコと音と振動を出して機械的なアシストが支持される世界は訪れないだろう。

また、E-Bikeはクルマやオートバイのように、高出力=高性能の世界ではないのも特徴だ。一般的にクルマやオートバイでは高出力モデルほど高価格を付けて販売することが一般的で、低出力で高価格のモデルは売れにくいのが現実だ。実際、高価格帯のライトウェイトスポーツタイプのクルマやオートバイの成功例は少ない。

E-Bikeに関しては、高価格モデルは最大70Nm以上と大型オートバイ並みの大トルクを発揮するドライブユニットを搭載するのが主流だが、そのような状況に背を向けた会社もある。SpecializedのSL1.1ドライブユニット搭載のE-Bike「Turbo SLシリーズ(Turbo Creo SL/Turbo Levo SL/Turbo Levo SL)」は、最大トルク35Nmと、他のE-Bikeよりも低トルクで、軽さと重量バランスの良さを売りにしている。価格は他のE-Bikeと同価格帯で決して安くはないが、クルマやオートバイとは違い、従来のE-Bikeでは不満だった層に人気を得ている。

E-Bikeの世界で低トルクユニットでも通用するのは、ドライブユニット単体だけでなく、強力な人間の脚力と合わせて走るからだ。人間のトルクはE-Bikeのドライブユニットよりも力強いのはあまり知られていない。超磁歪トルクセンサを用いた電動アシスト自転車の開発(PDF)では、最大トルク160Nmという表記があり、電動アシスト自転車実走行時のアシストオン・オフにおけるひずみ比較(PDF)でも、大トルクを出しているのがわかる。ドライブユニットの力と人間の力を合わせる事で走る事ができる乗り物だからできる技だ。

E-Bikeは従来のクルマやオートバイとは違う考えや評価軸を理解していくうちに、従来の乗り物と同じ考えで見るのではなく「E-Bikeは自転車のカタチをしたパワードスーツ」として見たほうが正しいのでは?と思うようになった。

実際「E-Bikeは自転車のカタチをしたパワードスーツ」という説を、E-Bikeに造詣が深い人に話すと共感してくれる人が殆どだった。

決定的だったのがFANTIC、SYM、ランブレッタといった海外製オートバイの輸入を行っている「サインハウス」のFANTIC担当の方と話した時。担当者がE-Bikeはオートバイとは違う楽しさがあると話した時、「E-Bikeは自転車のカタチをしたパワードスーツ」説を展開すると共感し、持論が確信になった。

E-Bikeをパワードスーツと呼ぶのは疑問に思う人もいるかもしれないが、ロボットは何を行うかによって仕組みやデザインが変わるため、パワードスーツも同じことが言えるだろう。また、現時点では自転車を漕ぐためのパワードスーツは無いため、E-Bikeは一番パワードスーツに近い乗り物と言えるだろう。

E-Bikeがパワードスーツと呼ばれる一方で、電動モペットや原動機付自転車はパワードスーツとは言われない。これらの乗り物がパワードスーツと言われなかった一番の理由は操縦方法で、多くの原動機付自転車や電動モペットは、スロットルレバーを使い車体を動かす。スロットルレバーは自転車のペダルを漕ぐのとは違い、人間の動きに同調しないのでパワードスーツ感が無いのだろう。

自転車のカタチをしたパワードスーツと言えるE-Bikeの今後の課題はイメージだろう。特に一番の問題は試乗できる場所が非常に少ない事。百聞は一見にしかずと言うように、ボッシュ、シマノ、スペシャライズド、パナソニック、ヤマハなど大手ドライブユニットを搭載したE-Bikeに乗らないと「E-Bikeは自転車のカタチをしたパワードスーツ」という意味は理解できない。この記事を読んで興味を持ったのなら、乗ってみるべきだ。

文:松本健多朗