【試乗】折りたたみとBosch製E-Bikeユニットを合わせた Tern Vektronの利点とは?【E-Bike】

欧州を中心に注目されているE-Bike。日本でも様々な企業からE-Bikeが登場しており、E-Bikeブームの気配が見えている。折りたたみ自転車でもE-Bikeの流れがあり、その中でも有名なE-Bikeと言えばTern Vektronだ。Tern Vektronは、折りたたみ自転車やストリートタイプのスポーツサイクルで有名な「Tern」のE-フォールディングバイク(電動アシスト折りたたみ自転車)。一般的なE-フォールディングバイクは、折りたたみ性能を重視し、パワーよりも軽さを重視した電動アシストユニットを搭載した物が多い。しかし、Tern VektronはE-Bike用ユニット「Bosch Active Line Plus」を搭載することで、E-クロスバイク(クロスバイクタイプのE-Bike)らしいスポーティなフィールを採用したE-フォールディングバイクだ。

今回紹介するVektronは、時間の関係でBosch Japanが所有しているモデルをお借りした。カラーはかつて存在したVerge S11iを連想させる量産車には無いBoschオリジナルのシルバーを採用。カラーリングが違うだけで、ドライブユニットの変更は無い。

(参考)量産車のカラーリング
(参考)Tern Verge S11i

高い汎用性と低重心化を実現した車体

Tern Vektronを他のE-Bike比べた時、一番の利点なのが折りたたみ機構だろう。車体重量が19kgを超えるため折りたたみは簡単ではないが、ハンドルポストが折りたためるため、家の空いたスペースに置くことができる貴重なE-Bikeだ。

折りたたみ自転車には、フレームサイズが1種類しかないためハンドルやサドル高さの調整域を取ることで、高い汎用性を実現しているモデルが多い。それはTern Vektronも例外ではない。ハンドルはワンタッチで高さを上下に調節できるため、幅広い身長に対応している。

出典:Tern Bicycle

積載量に関しては前後にラックの取り付けが可能だ。リアラックはVektronの専用品があり、バッグ類やチャイルドシートが装着できる。小径ホイールのおかげで重心が低いため、重い荷物を載せても比較的安定して走行できるだろう。

バッテリーはE-Bikeでは珍しく車体中心近くに搭載。車体前方に荷重がかからず、従来の自転車に近い自然な感覚で運転できる。タイヤはSchwalbe Big Apple 20×2.15インチと、太いタイヤを採用。これにより、小径折り畳み自転車特有の硬い乗り心地や、一般的な自転車よりも神経質なハンドリングが解消されているだけでなく、小径自転車と感じさせない重圧感がある乗り心地を実現。歩道の段差や多少荒れた道でも安心して走る事が可能だ。

本格E-Bike用ドライブユニット「Bosch Active Line Plus」を搭載

Tern Vektronに搭載されているE-Bikeユニット「Bosch Active Line Plus」は、定格出力250W、最大トルク50Nmのサイクリング用E-Bikeユニット。一部クラッチ機構の削除により、40-50Nmクラスでは、アシストがかかった時のダイレクトで直結感があるフィールを実現している。

このドライブユニットの利点はアシスト音が静かなこと。今回、街乗りからサイクリング、急坂での走行等一通り行った。E-Bikeによってはアシスト時の音が大きいのがあるが、Active Line Plusはどんなシチュエーションでもモーターのノイズが静かなのが印象的だった。欠点はアシストが切れた時のゴリっとした感触。これはスポーツライドで急に脚を止める時に感じる事が多い。しかし、今回乗車した場面では、そのようなシチュエーションが無いため特に問題なかった。

バッテリーは36V 8.2Ah。近年のE-Bikeでは36V/10.0Ah以上の大容量バッテリーを搭載しているモデルが多いため、Vektronのバッテリー容量は少ない。しかし充電時間は0~100パーセントの場合、僅か2.5時間(0~50%の場合は1時間)と短い時間で充電できる。充電器もE-Bike用ではコンパクトなため、休憩中に充電を行う事も可能だ。

Tern Vektronのインプレッション

今回、Tern Vektronを街乗りからサイクリング、子ノ権現等のヒルクライムまで、様々な道を運転したが、Vektronの乗り味を一言で表すと「クルマ」みたいな感覚だ。その理由は、ドライブユニットと車体設計Vektronに搭載されているE-Bikeユニット「Bosch Active Line Plus」は、トルク重視のスムーズなフィーリングで、クルマのように静かに力強く発進する。そして、マウンテンバイク並の太いタイヤは、一般的な小径自転車では不安な、ひび割れた路面や歩道の段差をいなしてくれるため、神経質にならずリラックスした運転ができる。太いタイヤとバッテリーを車体中心近くに載せた事により、自転車のグライダーのようなヒラヒラとした軽快感が無く、重圧感がある走行感を実現した。ブレーキはMagura MT4油圧ディスクブレーキを採用。マウンテンバイクにも使われるレベルで、軽いタッチで瞬時に止まってくれる。

アシストモードはECO、TOUR、SPORT、TURBOモードの4段階を用意。ECOモードでもアシストされている感覚はあるが、上り坂になるとアシスト力が少ない。上り坂を走るのならTOUR、SPORT、TURBOモードを使うのがベストだ。

Vektronにはハンドルやフレームに折りたたみ機構が搭載されているが、この辺りの剛性面に関しては不安は無い。油圧ブレーキ特有の強力な急減速でも、ガタやしなりが無いので安心だ。

E-Bikeの大きな利点と言えば上り坂が楽に走行できることだが、それはVektronも同じだ。一般的な折りたたみ自転車はヒルクライムが苦手だが、E-Bikeユニットを搭載したVektron、他のE-Bikeと同クラスのヒルクライム性能を実現している。アシストのおかげで一般的な坂なら、軽いジョギングの感覚で走ることができる。

折りたたみ機構は便利な反面、使いにくい事も

E-Bikeは従来の自転車よりも重いため、クルマに載せての移動は厄介だ。しかしVektronは折りたためるため、気軽にクルマに載せることができる。しかし、その折りたたみに関しては問題がある。それは車体重量が19.8kgと重いこと。Vektron等のフレーム横折れタイプの折りたたみ自転車は、車体を持ち上げながら折りたたむ必要があるため一苦労する。

Vektronで頻繁に折りたたみたい場合、2つの方法を覚えておいたほうがいいだろう。

1つ目は、バッテリーを外して事前にバッテリーを外して折りたたむ事。Vektronに搭載されているバッテリー「Bosch Powerpack 300」のバッテリー重量は約2.5kg。バッテリーを外した場合の車体重量は17.3kgと多少は軽くなる。(外したバッテリーはバックパックに入れて持ち歩く)

ダブルレッグタイプのセンタースタンド+折りたたみ自転車に装着した例

2つ目はダブルレッグ(2本足)タイプのセンタースタンドを装着する方法。このタイプのスタンドは一般的なセンタースタンド(1本足)よりも安定しているだけでない。前輪を浮き上がらせた状態にすれば、折りたたむ時、スタンドが車体を支えてくれるため簡単に折りたたむことができる。また、Vektronは、スタンドを出した状態でもシートポストを底まで下げることが可能だ。この2つの方法は使う、使わないに関わらず覚えておいて損はないだろう。

クルマに積めるE-Bikeという独特のポジションにある「Tern Vektron」

小径折りたたみ自転車というのは乗り心地が硬い、ハンドリングがシビア、フレームが分割されているので加速が鈍い等、多少の癖がある乗り物として知られている。しかし、Tern Vektronは電動アシストと折りたたみ自転車の癖を抑える味付けにすることで、小径自転車に不慣れな人でも運転できるE-Bikeを実現した。それだけでなく一般的なサイクリングレベルなら他のE-Bikeと同等のサイクリングが楽しめる事が可能だ。

そして、E-フォールディングバイク(折りたたみ自転車タイプのE-Bike)の中でも、Vektronは、本格E-Bikeユニット「Bosch Active Line Plus」を搭載したことにより、クルマに積めることができる本格E-Bikeという貴重な1台となった。かつては、アシストが無いクロスバイクと折りたたみ自転車では、折りたたみ自転車のほうが長距離サイクリング(ロングライド)やヒルクライムは不利なのが実情だった。しかし、E-Bike化により、折りたたみ自転車は性能が一気に引き上げられる事が可能になった。

運転する絶対的な面白さはTern Vektronよりも他のE-クロスバイクが上だが、E-Bikeでは性能格差が少なくなりつつある。街乗りやサイクリング目的のE-クロスバイクを購入するのなら、Tern Vektronを試乗して比べるのをお薦めする。

  • フレーム:Vektron G2 アルミフレーム
  • フロントフォーク:6061アルミ
  • 重量:19.8kg
  • ブレーキ:Magura MT4油圧式 ディスクブレーキ
  • ギア(前):52T
  • ギア(後):SHIMANO 11-32T 10段変速
  • フロントホイール:Kinetix Comp, QR, doublewall, disc, Novatec Hub, 100mm, 32H
  • リアホイール:Kinetix Comp, QR, doublewall, disc, Novatec Hub, 135mm, 32H
  • タイヤ:Schwalbe Big Apple, 406, 20×2.15 F/V
  • ドライブユニット:Bosch Active Line Plus(定格出力250W、最大トルク50Nm)
  • アシスト方式:ミッドドライブ
  • バッテリー:36V 8.2Ah
  • 充電時間:約2.5時間
  • アシストモード:4段階(ECO/TOUR/SPORT/TURBO)
  • 航続距離:(100km/65km/60km/55km)

文:松本健多朗
車両協力:Bosch Japan

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