電子書籍の歴史と現状・そして課題について その4

おわりに

最期に「なぜ電子書籍は、今になって注目されたのか」「電子書籍は普及するのか・普及したらどのような影響があるのか」「今、電子書籍を購入するのは得なのか」を論じて終わりにしよう。

(1)なぜ電子書籍は、今になって注目されたのか

2010年に、日本でiPadの登場により、電子書籍に対してあらゆるメディアが、電子書籍元年と言い、電子書籍を新しいジャンルと紹介していた。しかし、実際は、iPadやキンドルが登場する前から、電子書籍は存在しており、電子辞書に関しては、生活の中に溶け込んでいる。アメリカではデジタル化される前から、音声で聞く本、いわゆるオーディオブックが存在している。また、パソコンなどの情報端末の普及により、あらゆる情報が紙媒体ではなく、電子端末で読むことができるようになっている。しかし、電子書籍として明確に発表されてあるソフト以外は電子書籍とは、だれも言わない。その理由を自分なりに考えてみた。

紙媒体の書籍は、軽量で携帯性に優れ、寿命が長い利点がある。携帯端末電子書籍について調べれば調べるほど、端末として紙媒体の書籍は非常に優秀。ソフト面で書籍が電子化されても、ハード面で、太刀打ちできなかった。

初期の電子書籍専用端末はハード面でも専用端末が普及せず、パソコン上で読むしかなかった。紙媒体の書籍は持ち運びが用意で、いつでも読めることが可能だが、デスクトップパソコンは持ち運びが不可能であり、読む場所を制限され、姿勢も固定されるので、決して本を読む感覚ではなかった。また持ち運びが可能なノートパソコンも紙媒体の書籍よりも遥かに重く、熱を発するので決してどこでも使える端末ではなく、紙媒体の書籍よりもはるかに見劣りしていたからだろう。そして、携帯電話で読むケータイ小説やケータイ漫画が登場するが、携帯電話の画面の大きさや、性能面の問題により、紙媒体と同等の表現は難しい。また、携帯電話で小説を読む層が、若年層向け向けのコンテンツが多く、幅広いコンテンツを提供できなかった。現代のタブレットPCやスマートフォン、電子書籍専用端末は、画面が大きく幅広い表現が可能になった。また紙媒体の書籍みたいに持ち運びか可能で、長時間使用できようになり、電子書籍市場が活性化したのではないかと思う。

(2)電子書籍は普及するのか、また、普及したら世界はどのように変わるのか

電子書籍が普及するのには必要なポイントは3つある。1つ目は携帯できる端末が低価格で購入できること。2つ目はコンテンツを豊富に用意していること。3つ目は、読書以外の付加価値をつけることだ。1つ目の低価格で電子書籍端末を購入すること。電子書籍を読むための端末は、電子ペーパーを採用した電子書籍専用端末と、タブレット形パソコンの2種類があるが、一番の問題は、他の電子機器と比べて購入する意味合いが少ないことだ。電子書籍専用端末は、基本的に電子書籍を読むことを重点に置いているため、大量に普及することは見込めない。タブレット形パソコンは、電子書籍以外にインターネットや動画再生等が行え、多目的に使用することが可能だ。インプレスR&Dのタブレット端末利用動向調査報告書2012では、タブレット端末の個人所有率は6.8パーセントiと低い。半年前の調査では3パーセントであり、所有率が大幅に上昇したが、タブレット形パソコンは普及している端末ではない。その理由は、タブレット形パソコンは他の情報機器よりも優位性が少ないからだ。例えば、日本での普及率は60パーセントiiと高いノートパソコンは、映画鑑賞やビジネス面等、幅広い使用ができる。タブレット形パソコンは、CDDVDを読み込めることが可能な、光学ドライブを装着できない。また、文書を打つ場合も、画面上に表示されるキーボードは、通常のキーボードのように連続して入力するのには向かない等、タブレット端末はノートパソコンの代替にはならない。ノートパソコンよりも携帯電話の代替には程遠いだろう。また、タブレット形パソコンの価格は3万円から5万円するが、安価なノートパソコンの価格も同程度する。タブレット形パソコンは、必然的が低く、価格も安くないため、普及するには時間がかかるだろう。

電子書籍が普及するためには、電子書籍専用端末やタブレット形パソコンではなく、スマートフォンが電子書籍普及の鍵になるだろう。IT用語辞典によると、スマートフォンは、個人用の携帯コンピュータの機能を装備した携帯電話であるiii。携帯電話よりも性能が高く、画面サイズも大きい。そのため、紙媒体に近い表現が可能になった。各電子書籍配信会社も、スマートフォン携帯電話は日本国内の普及率は90パーセントと高いiv。また、日本国内でのスマートフォンの出荷台数比率は、2011年度上期では44.9パーセントと高くv、スマートフォンが普及するのは時間の問題だと思われる。

コンテンツについては今後増えるだろう。例えば、新潮社は作者の了承を取った新刊書籍について、紙媒体の書籍と電子書籍の両方を発売する意向を示している。また、個人が電子書籍を出版する電子書籍配信サービスの「Paboo」や、作家の村上龍は、株式会社グリオと共同で、電子書籍配信会社「G2010」を設立するなど、新たな取り組みも生まれている。

最後の、読書以外の付加価値をつけることは。アメリカでは実際に行なっている会社が多い。キンドルやKoboが行っている、ソーシャルネットワークサービスなどで利用者を増やす取り組みを行っている。読書に新しい価値観をつけることで今まで読書をあまりしなかった人にも読んでくれる可能性がある。

アメリカでのキンドル等の電子書籍の販売が年々上がっている現在、日本でも、電子書籍は普及する可能性が非常に高い。電子書籍の普及により、一番影響が出るのは個人の自費出版が手軽に可能になることだろう。アメリカアマゾンの2011年の電子書籍販売ランキングでは、トップ10の中の3作品は、出版社を通さないで、出版した個人作家の作品だったvi。キンドルのサービスが日本でも登場するようになれば、このような現象も起こるだろう。今まで、人目につかなく埋もれていた作品を手に入れることが可能になり、新たな作品を読むことが可能になるだろう。

一方で、電子書籍が普及すると紙媒体の書籍が消えると考える人もいる。電子書籍と紙媒体の書籍の対立する話も見る。しかし、電子書籍は紙媒体の書籍を無くすことはなく、新たな書籍の1つのジャンルとして残るだろう。紙媒体の書籍は、何百年も前からあり、現在でも残っている。電池を使わず、壊れにくい紙媒体の書籍は、今後も生き残る。しかし、電子書籍が発展すると、既存の本が出版されるのは少なくなる可能性が高い。少なくとも、アメリカでは低価格のペーパーバックの販売が少なくなり、電子書籍の普及による影響が出ている。

(3)電子書籍は、今購入すべきか

電子書籍は、どのハードを購入するかによって、読める本の種類が変わる。電子書籍専用端末は、閲覧できる電子書籍が少ない欠点を持つ。現在、日本で唯一の電子ペーパーを採用した電子書籍専用端末のソニーリーダーは、ソニーの電子書籍配信サービスのリーダーストアと、紀伊国屋BookWeb、楽天のRabooで購入した本を読むことが可能だが、タブレット型パソコンのように、あらゆる電子書籍を読むことはできない。一方、タブレット型パソコンは、駆動時間が短い欠点を持っている。

電子書籍端末を購入するのなら、漫画や読む人や、長時間読書をしない人、電子書籍専用端末の配信サービスを限定されるのが嫌な人は、タブレット型パソコンを薦める。一方、小説等の文章を沢山読む人や、電子ペーパーを使用している電子書籍専用端末がいいだろう。電子ペーパーは現在、白黒表示しかできないが、電子ペーパーのカラー化が試作されている。近いうちにカラー化された電子書籍専用端末は登場するだろう。

電子書籍は、ハード、ソフト両面とも日進月歩のような動きで進化し続けている。アマゾンキンドル日本進出や、楽天のKoboの買収などで、ますます過熱していく電子書籍がどのように行くのか見守りたい。

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インプレスR&D 「―個人の有料アプリ・コンテンツ利用率はスマートフォンを上回る31.8%― 『タブレット端末利用動向調査報告書20121215日(木)発売

20111213日作成

http://www.impressrd.jp/news/111213/tablet2012>(201212参照)

ii PC Watch「元麻布春男の週刊PCホットライン 低価格化が進まない日本のPC事情」2011524日作成

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/hot/20110524_447848.html>(201112月参照)

iii IT用語辞典「スマートフォンとは【smartphone意味/解説/説明/定義 : IT用語辞典」作成日不明・201138日更新

http://e-words.jp/w/E382B9E3839EE383BCE38388E38395E382A9E383B3.html>(201112月参照)

iv世界情報通信事情「携帯電話事情 | 項目別に見る | 世界情報通信事情」作成日不明

g-ict.soumu.go.jp/item/mobile/index.html>(201112月参照)

v WirelessWireNews201149月の国内携帯電話端末出荷、スマートフォンは全体の49.5%に

20111130日作成

http://wirelesswire.jp/Mobile_Market_Survey/201111301900.html>(201112

月参照)

vi ITMedia eBookUSER「米Amazon2011年電子書籍販売ランキング、トップ10作品のうち3作品は個人作家

http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1112/16/news077.html>(201112月参照)

参考文献

津野梅太郎『本はどのようにして消えてゆくのか』 1996

萩野正昭『電子書籍奮戦記』新潮社、2010

佐々木俊尚『電子書籍の衝撃』ディスカバートゥエンティワン、2010

石川幸憲『メディアを変えるキンドルの衝撃』毎日新聞社、2010

野村総合研究所『2015年の電子書籍』東洋経済新報社、2011

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