自動車比較論 トヨタ・シエンタ/ホンダ・フリード

3列シートのミニミニバンとして、よく比較されるトヨタ・シエンタと、ホンダ・フリード。この2台はよく比較されていて、我が家もシエンタを購入するときに比較した。シエンタとフリードは同じコンセプトで作られた車ではない。

・外観

街中で非常によく見るフリード。かつての初代メルセデス・ベンツAクラスみたいに、ボンネットを目立たなくしたワンモーションスタイルになっていて、前モデルのモビリオよりスタイリング重視になっている。そのためか、ボンネットが見えない。2列シートモデルにフリードスパイクがあり、こちらはモビリオスパイクの後継車。モビリオとモビリオスパイクはデザインを大幅に変えていた。フリードとフリードスパイクは、ぱっと見はあまり違うようには見えないかもしれないが、フリードスパイクはフリードよりもボンネットを目立たせる等をして、モビリオスパイク風のデザインにしている。実はシエンタよりも全高が高い(フリードの全高は1715mm)が、室内高はシエンタ(フリードは1265mm、シエンタは1310mm)より低い謎がある。

一方のシエンタはボンネットが水平に近く、フロントの柱(ピラー)が立ち気味なので、車体の感覚がわかりやすい。女性向けで、男性禁制なデザインな丸目で長らく売られていたが、2011年に復活したときに、角目仕様のダイスが登場した。実はシエンタは、幾度かのマイナーチェンジ時に、テールランプ部分のデザインを変更している。ストップランプは初期モデルから、当時としては先進的なLEDを採用していた。

シエンタは、全高が1.7mを切っていて(全高1680mm)、フリードよりも全高が低い低重心ミニバンになっている。恐らく登場当時(2003年)には、背が高い車が流行らなかったためだろう。今でこそタント・NBOXなどの、背が高い車が売れているが、同じ年に登場した背が高いダイハツ・タントは完全にキワモノ系とメーカーは考えていたのか、登場初期は売れ線のカスタムシリーズがなかった。

(タントは、かつてのムーヴSR-XXに近いグレードのRSはあったが、SR-XXよりも地味だった。同じくダイハツの2代目オプティは、軽自動車で4ドアハードトップセダンという、超キワモノ車なのに最初から「エアロダウンビークス」というカスタムモデルがあったので、初代タントがどんな扱いだったかわかると思う。)

・内装
フリードとシエンタは、同じサイズ、同じ排気量のミニバンだが、車がわかる人が内装をみれば全く考えが違う車だとわかる。

フリードはミニバンの発想で作られている。運転席からの目線が、ミニバン並みの高さがあり、フラットフロアだ。3列目は左右はね上げシートなので荷室高が室内高と同じになっている。ただ、床下収納が無いので、物を積むスペースが無いのは困る可能性がある。シエンタには床下収納があり、これのおかげで緊急用工具を積んでも、荷室が圧迫されない。

展示車に乗った限りでは、フリードの足元は全列ともシエンタと比べると狭い。一番の違いは2列目の足元スペースで、シエンタのほうが断然広い。シエンタは3列目を床下収納することによって、2列目をロングスライドさせることができるが、フリードの3列目は跳ね上げ式なので、2列目の位置を後方にやることができなかったのだと思う。

フリードのシートの作りは良いが、なんでも積み込んだせいもあって、弊害が出た部分がある。

2列目がキャプテンシートになっているモデルは、ウォークスルーさせるために2列目を、端に寄らせているので、顔が窓に近づきすぎる。こんな風になったのは、シートを真ん中に寄せると今度はウォークスルーができなくなるからこうなったんだろう。また、キャプテンシートは畳むことができないので、ミニバンとして考えるのではなく、多人数乗用車と考えたほうがいい。かつてのデリカ・スペースギアの7人乗りモデルや、ステップワゴンみたいなチップアップシートにできなかったのは、コストの問題かもしれない。

フリードで荷物を沢山積みたかったら、2列目がベンチシート(こちらは畳むことが可能)のモデルのほうがいい。こちらは恐らく3代目ステップワゴンの流用。3列目も狭いが、左右跳ね上げ式の昔のステップワゴンのシートを採用しているので、人を乗せるのならフリードだ。

一方でシエンタはミニバンを諦めた。ミニバンを諦めた所がわかるのは、ウォークスルーとフラットフロアと目線の位置だ。シエンタはフリードみたいに1列目・2列目がウォークスルーできない。シートの作りはそこそこだが、1・2列目のシートの大きさが大きめなのはいい。因みに、我が家の前車(ライトエースノア)よりもシートは大きい。

シエンタがフリードよりも屋根が低いのに、室内高が高いのは、フラットフロアを諦めスライドレールを張り出したようにしたからだろう。恐らくフラットフロアにすると、室内高が減り快適に座ることができないので、フラットフロアを諦めたのだと思う。このためシエンタみたいにシートレールが出ていると、灯油缶を2つ置くのにも苦労する。実は、フリードみたいなフラットフロアは非常に使えるのだ。

シエンタは、頭上の広さはフリードと比べると、広い感じはしない一方、足元が深くて広い。目線もコンパクトカープラスアルファの高さなので、屋根が高い車に乗っている印象があまりない。それでも身長183cmの自分が座っても足を前に投げ出す姿勢にならないのは凄いと思う。

2列目はベンチシートだが、左右ヘッドレストの位置が真ん中に寄っているので、いつもは2人で乗るようにしている。2人で乗ると、座面がフリードよりも広くなるので、ゆったり感はあるが、シートが真ん中が分かれ目になっているので、真ん中は人が乗るには完全に不向きだ。2列目は簡単に跳ね上がり前方にスライドすることができる。これは非常に便利で、後ろに人が簡単に乗り降りできる。

シエンタは1・2列目は広いが、3列目は小さい補助席だ。3列目には、天井に手を握るグリップがないので、完全に補助席だと考えているのがわかるだろう。ただ、3列目は着座位置が一番高く、完全に椅子に座るような状態なのと、足元スペースがあるので、意外と座れるが、駅までのお迎え用だ。また、3列目は床下収納なので、邪魔にならない一方、室内高が減るので自転車をそのまま積載するのが非常に難しい。

・走行性能/安全性能

ディーゼルワンボックスカー(マツダ・ボンゴワゴン)を知っている人からすれば、シエンタはライトエースノア(2000ccガソリン)よりも加速が良い。因みにスペック的には、フリードもシエンタと同じくらいの性能だ。個人的には今の時代は動力性能よりも、安全性能のほうが重要だと思う。

フリードは、横滑り防止装置が全車標準装備な一方、シエンタはダイスの2輪駆動車にしかメーカーオプションで装着できない。はっきり言って、これはトヨタの怠慢だ。

個人的には雪国に住んでいる人で、4輪駆動車が欲しい人はフリードに分があるかもしれない。

シエンタの4輪駆動車は、2輪駆動車よりもエンジンが古く、変速機も4速オートマチックと古い形式で横滑り防止装置はつけられない。フリードの4WD車は、新しいエンジンに5速オートマチック、全車横滑り防止装置が標準装備と、雪国最強仕様になっている。

・ラインナップ

フリードは、3列の6・7人乗りのフリードに、2列仕様のアウトドア仕様のスパイク、フリード・フリードスパイクのハイブリッド仕様と、多岐なラインナップになっている。かつては、8人乗り仕様の3列目を無くして、5人乗りにしたFLEXがあったがスパイクの登場と共に消滅した。

一方で、シエンタは7人乗りのみで、新しいダイスでお茶を濁す程度。場合によってはパッケージングはフリード以上なので、荷室を樹脂の内装にして「シエンタ・スパイク」を作れば売れるかもしれないが、そろそろ新しい車を出したいトヨタとしては、お金を掛けたくなかったかもしれない。

・販売台数

2012年の年間販売台数は、フリードは106,316台、シエンタは29,926台。超馬鹿売れのフリードに、10年近く前の車が自動車販売ランキングTOP30に入っているシエンタ。両車とも化け物カーだ。

・中古車の値ごろ感

どちらも安くない。「ミニバン」と「コンパクト」という、値下がりしない2つの条件がそろっているので、両車とも高い値段が付いている。フリードの中古は少なく、人気があるので安くない。シエンタは、登場から10年が経っていて安くなっているモデルもあるが、昔みたいに3年落ち100万円で買えるわけでもない。程度を考えると、けっこう古くてもいい値段がする。

・両車のコンセプト

フリードはFitのミニバン。シエンタはVitzの3列ワゴン車で、4プラス3シーターで使うワゴン車だ。3列目は、昔あったステーションワゴンの3列目だと思えばいいと思う。

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