5Linksの開発秘話から見る日本の自転車産業の空洞化


かつて自転車産業は日本が中心となっていたが、プラザ合意後の円高等により工場の海外移転などにより自転車産業の中心は台湾となったと言われている。自分みたいなユーザーにとって、工場の海外移転がどのような影響を与えるのがあまりわからないが、5Links2のブログを見ると、工場の移転により日本では自転車関連のモノづくりが衰退しているようだ。

アルミ製の折りたたみ自転車は「中国」か「台湾」でしか量産製造はできない

「デザインコンセプト」10 日本発の自転車とは・・・ / 5LINKS – ファイブリンクスでは、当初は日本製の折りたたみ自転車を製作しようとしたが、上手くいかない話がある。

いろいろな経緯があり、現在の私の師匠である「絹自転車」のA氏に出会うと、
「「中国」か「台湾」でしかアルミ製折り畳み自転車の量産製造はできない」
とのアドバイスをいただき、彼の工場で鉄製の構造試作車を作ってもらった後に、「台湾・中国行脚」OEM工場探しを始めたのでした。着想から4年後、2006年頃の話です。

アルミ製の折りたたみ自転車は「中国」か「台湾」でしか量産製造はできないというのは、エンドユーザーから見ると衝撃的な話だ。

台湾だと条件付きで容易に部品を作ってくれる

日本でCAD図面を使って、CNCで作ることもできますが、大量に作る場合は別にしても、少量であればかなりのコストがかかります。
以前に記載したように、台湾で開発するということは、他の量産車にも使用できる可能性のあるパーツであれば、「アルミの加工工場さん」は喜んで?作ってくれるわけです。その代わりオープンモールド(公開され他社が使ってもいいパーツ)となりますが。

「日々是改善」(ひびこれかいぜん)2 防水キャップ / 5LINKS – ファイブリンクスから引用。日本では製作を行っても製造基盤が無いため、量産数が少なくなり高価になるが、台湾だと製造基盤があるため、汎用性があり他社が使用しても良い部品なら、作ってくれるとのこと。

フレームパイプが選び放題で設計の自由度が増す

から日本で「傘」(編集注:5Linksの初期のコンセプトモデル名)を作ろうとしたときに、フレームに使用するアルミ管を選択しようとしたら、単純な「円管」と「角型管」しか調達できないであろうということでシンプルな車両デザインを描いていったのですが、実際フレーム製造工場に行くと、
工場の棚(幅10m高さ3mくらいでしょうか)に、無造作に何百種類という形のチューブ(トップチューブ、ダウンチューブ等)が刺さっていて、まるでミツバチの巣のような光景を見せられたのです。
そして係の人から、「好きなパイプを選んで」と言われたのです。
変わった形状の押し出し管やハイドロフォーミング技術などを使った管が選び放題で、曲げ加工や厚み、テーパーなどもお好みで変更が効くというのです。

「デザインコンセプト」10 日本発の自転車とは・・・ / 5LINKS – ファイブリンクスから。因みに、台湾のフレームブランドのKinesisは、フレームだけでなくチューブ単位のカタログがある。ダウンチューブだけで37ページあり、様々なパイプがあるのがわかると思う。

生産国の強みはインフラを握っているということ

5Linksの開発秘話を見ると、台湾の自転車産業の強みは生産国の強みでインフラを握っていることなのではないかと思う。工場を海外に移し、生産の中心が海外になると最終的に設計から生産までのインフラを奪われ、日本で容易に生産ができなくなり消費しかできなくなる事例となるのがわかる。近年の日本は「モノづくり」を謳っているが、自転車産業は「モノづくり」を言うのは難しくなっている。安易に「モノづくり」を言う漠然としたイメージに乗るより、空洞化を行っている他の業界も「自転車産業化」してしまうのではないかと危惧したほうが良いのではないかと思う。

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